幼馴染との正しい距離感

｢いい加減、少しは自覚して｣



振り返ったこーくんは
怒ったような、困ったような顔をしていた。


ほんの少し、苛立ちをにじませた声で私に言う。



｢気付いてないと思うけどね
つむぎちゃんの事、いいなって思ってる男
結構いるんだよ？｣

｢いないよ｣

｢いるの
僕が学校でわざわざ人目につく場所で
つむぎちゃんにひっつく理由がそれ｣

｢…ええ？｣

｢まあ、単純に僕がつむぎちゃんに
触れたいっていうのもあるけど
一番の理由がそれ｣



こーくんは掴んでいた手を離すと
軽くうなだれて
もう一度、深々とため息をついた。



｢……つむぎちゃんの
自己評価が低いのは昔からだけど｣



ぽんっと頭の上に置かれた手。


そのまま優しく、撫でられる。



｢つむぎちゃんは本当に可愛いし、優しいし
人を惹き付ける子なんだよ｣


｢だからもっと警戒して
じゃないと、心配で僕が困る｣



…。



……そんな


そんな優しい顔で


そんな風に言わないで欲しい。



こーくんだけだよ。


ずっと、可愛いって言ってくれたの。



自信がなくて


色んなことに悩む私をいつも励ましてくれたの。




……そんなこーくんだから、私は…




｢…さてと、お説教はここまでにして
何か食べて帰ろうか｣



気持ちを切り換えるように
もう一度、小さく息を吐き出してから


こーくんは微笑んだ。



｢雑用でつむぎちゃんも疲れただろうし
甘いものとか｣



いつもの調子で「どう？」と
問いかけてくるこーくんを見上げる。