二人を繋ぐ愛の歌
「えっと、その前髪だと前が見えなくないですか?」

「昔からプライベートで出歩く時はこんな感じだから慣れてるんだよ。
それにこんな感じだと他人から話しかけづらいでしょ?」

「そう、ですね……?」

話しかけづらい雰囲気を作っているのなら話しかけないでほしいと思いながら、沙弓は惣菜の袋の重みで痺れかけている両手の荷物を腕にかけたりと持ち変えていると男性はまだ用があるのか口を開いた。

「あのさ、箸袋に書かれてる住所を頼りに来たんだけど【多幸】ってどこかな?」

「あ、それならこの先を真っ直ぐ……って、もう閉店してますが……?」

「え……」

そう言うと男性はポケットから箸袋を取り出して営業時間を確認し、閉店時間から大分経っていることに気付いて頭を掻いた。

「参ったな……せっかくスタジオ抜け出して買いに来たのに」

「え、まだお仕事中なんですか?」

「ん……まあ、仕事みたいな感じかな?」

何となく言葉を濁されたような感じはするが、どうやら弁当を買えなくて困ってるらしいのは確かだった。

今も尚、沙弓の腕で存在を主張し続けている重い袋の中身である惣菜をチラッと見ると、沙弓は男性の前にその袋を差し出した。
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