二人を繋ぐ愛の歌
「ある日、ロケでの撮影でお弁当の手配を忘れてしまったスタッフさんが偶然近くにあった【多幸】のお弁当を買って現場で配ったそうなんです。
その味をとても気に入った俳優さんが、“この弁当なら毎回美味しく食べられそうだな”と呟いたのがそもそものきっかけで、それから口コミで広がって今に至ります」

「……そうなんですね」

納得して頷くと向かいの席で配達したての弁当を前に座っているユウナがにっこりと笑った。
何故目の前にユウナがいるのかと言うと、この音楽スタジオで弁当の配達を頼んだのが他でもないShineとそのスタッフ達だったからだ。

それを知らずに配達に来た沙弓の前に偶然現れたユウナは思いがけない再開に喜び、この後沙弓の予定がないことを確認すると懇願するように沙弓を引き止め今に至ると言う訳だった。

そして、先程エレベーターで感じた疑問を口にすれば返ってきたのがさっきの答え。

【多幸】がテレビ局などへ弁当を配達している理由は分かったが、ここへ沙弓を名指しで指名して配達を頼んだ人物も理由も未だに不明だった。

「あの、ところで今日配達を頼んだのって……」

「ハルトです。
どうしても【多幸】さんのお弁当が食べたいって言い出して……でも、私も好きだから賛成したんですよー」

と開封前の弁当を前にワクワクしているユウナの様子に沙弓が苦笑していると室内の扉が開いてハルトが入ってきた。
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