二人を繋ぐ愛の歌
「……ここで合ってるよね?」

思わず確かめずにはいられないと言った感じで沙弓は手元のメモと目の前の建物を何度か見直したが住所も建物の名前も合っていて、正面玄関では挙動不審気味な沙弓を怪しく思ってか警備員が鋭い眼差しでこっちを睨んでいた。

もう数ヶ月以上前にもなる初めてテレビ局へ配達に行った時の事が思い出され、沙弓は小さく息をつくと気を取り直して真っ直ぐ前を向いて歩きだした。

「すみません、【多幸】です。
御注文のお弁当の配達に来ました」

一人の警備員に話しかけると警備員はチラッと沙弓を見てからどこかへ無線で連絡をとりだした。
暫くすると確認が取れたのか中に入るように促され、沙弓は有名な歌手やアイドルがレコーディングする大きな音楽スタジオの中へと入った。

テレビ局と違うのは建物の中にまでは厳重なセキュリティがないこと。
エレベーターに乗り十五階のボタンを押すと沙弓はの中にふとした疑問が沸き起こった。

今更ながら何故有名店でも何でもない町の小さなお弁当屋さんといった感じの【多幸】がテレビ局や音楽スタジオといった芸能人が出入りするような所に贔屓にされているのだろう。

けれど、その疑問も数時間もしないうちにあっさりと解けることとなった。
< 60 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop