二人を繋ぐ愛の歌
結局休憩時間が終わるまで遥にShineの曲を延々と聴かされ、パンフレットと今朝発売されたばかりだと言う特集が載っている雑誌を見せられたが、やはり沙弓には顔を覚えられる気がしなかった。

「これから毎日聴かせて、雑誌とかも色々見せるから覚悟しておきなさい!」

と言われたけれど、やっぱり休憩が終わった瞬間にShineの二人の顔を忘れてしまったことは言わないでおこうと思っている。

「嶋川、この書類のデータ今日中に纏めてくれ」

「わかりました」

「嶋川さん、この前の書類の事なんだけど……」

「いつのどの書類ですか?……一週間前の取引に関しての書類?でしたらまだそちらのフロアにあるはずなので探してみてください」

「嶋川さん、会議室の使用許可だけど……」

「ミーティングルームBを押さえてます。
一時間の予定だと聞いてましたけど、念のため余裕をもって三十分だけ多めに許可を貰いました」

「いつもありがとう、助かるよ」

何人か話しかけてきた内の最後の一人がお礼を言って去って行った瞬間に遥に腕を肘で突かれた。
手を休めることなく視線だけを隣に向けると、遥は少し興奮した様子で顔を近づけてきた。

「やっぱり格好良いよね!」

「え、誰が?」

「誰って……営業の南尾(みなみお)さん!イケメンで高身長、高学歴、成績もいつもトップで将来昇進間違いなしの我が社で一番人気の彼氏にしたいナンバーワンじゃないの!」

「さっきのが南尾さん?顔見てなかったから分からなかったけど、人気なんだ?」

「あんた、もうちょっと他人に興味持ちなさいよ……」

そう言われても、入力中に話しかけられてもパソコンから目が離せないのだからどうしようもない。
呆れた眼差しを向けてくる遥を気にすることなく、沙弓は手を止められないパソコンとの睨めっこに戻った。
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