二人を繋ぐ愛の歌
終業時間になり、沙弓はデスク周りを片付けると通勤に使っている鞄を手に取って立ち上がった。

「それじゃ、先に帰るね?」

「ええっ!?もう終わったの?」

「うん、今日までの分は全部終わったよ」

「うわー、いいなー。
沙弓入力早いもんね、羨ましいー」

そう言われて沙弓は肩を竦めてから自分のデスクの引き出しからお菓子を取り出すと、差し入れとして遥のデスクに置いた。

「今日は特別に急いでやったの。
叔父さんの様子見に行こうと思って」

「ああ、ぎっくり腰の……」

「そう。
ぎっくり腰からヘルニア発症しちゃったみたいでまだ暫く動けないみたい」

「うわぁ……。
お大事にって伝えといて」

「ありがとう、伝えとくね。
じゃあまた明日」

お互いひらひらと手を振って別れると足早に駅に向かい、会社から電車で三駅ほどかかる【多幸】に行く為の電車に乗った。
ちなみに一人暮らしの家まではそこからさらに五駅かかる。

沙弓は電車に乗っている間帰宅ラッシュの為座ることも出来ずにいた為、吊革に手をかけて小さく息を吐いた。

結局昨日と一昨日の【多幸】の手伝いは大きな取引先だと言うテレビ局の他にも音楽スタジオや野外でのロケ現場にも配達させられ、店に戻ると店舗での販売の手伝いもした。
これが中々の重労働で、沙弓は二日手伝っただけで腕や腰が痛くなったのだからヘルニアを発症した叔父が配達を続けるのはやはり厳しいだろう。

ーーやっぱり新しい人を雇った方がいいと思うんだけどなぁ……。

そうぼんやりと思いながら電車の窓から流れる景色を暫く見つめた後、パソコンとの睨めっこで疲れた目を休ませる為に目的の駅までほんの少し目を閉じることにした。
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