冬の王子様の想い人
「嫌だ、図星?」

フフッと可愛らしく口角を上げて言われ、手にしていたパンの入った手提げ袋と財布をギュッと握りしめた。

彼女は上り階段を背にして、私の正面に立ちはだかった。


「私がナツなのよ?」


ゆっくりと言葉を紡ぐその声には余裕すら感じられる。

目の前が真っ白になり、足元が崩れ落ちていく気がした。

葉山さんの声が私の胸に鋭い刃のように突き刺さって、胸の中に氷塊を呑み込んだかのような冷たさが広がっていく。


「う、そ……」


絞り出した声は情けなくも掠れていた。


ああ……やっぱり、葉山さんがナツさんだったんだ。


恐れていた予感が的中してしまった。手が震えてしまうのを止めれない。


「嘘じゃないわ。だって私は夏加だし、ナツに決まってるでしょ? 小さい頃からよく一緒に公園で遊んでいたし、自宅だって近かったわ。雪華くんの名前を一番最初に褒めたのは私なのよ?」

明るく言い放つその声には迷いが一切感じられない。彼女の言い分は昨日楠本くんに聞いたものとは違っていた。

「でもだったらどうして、今まで……」


雪華が見つけられなかったの? 


そんなにも近い場所にいた葉山さんの存在に気づかなかったり、見逃すなんてありえない。
< 120 / 154 >

この作品をシェア

pagetop