冬の王子様の想い人
「海外に行っていたから確認できなかっただけよ!」

これまでの可愛らしい雰囲気とは一転して、キツイ声で言い放つ。


「私がナツなの! 雪華くんの捜していた女の子なのよ。ナナちゃんは偽物なの! さっさと雪華くんを返して」

ひと際大きな声で叫んだ声が壁に当たって反響する。


『偽物』


その言葉がズンと心に鉛のように重く沈む。

私は彼が切望していた女の子じゃないって知っていた。でも雪華はそれを承知で好きだと言ってくれた。


それなのに諦めなければいけないの? 
別れなければいけないの? 
こんなに好きなのに。


「……それでも好きなの」


ポツリと力なく言う。


「雪華の気持ちを信じたいの」


鼻の奥がツンとする。自信なんかなにもないし、好かれる根拠もわからない。
ただ好きなだけ。
傍にいたいだけ。


今だって足はガクガクしている。叶うならこの場所から今すぐ走って逃げ出したい。

でも、それはできない。葉山さんが私と同じように雪華を好きだとわかるから。だから今、ここで逃げるわけにはいかない。


『七海が心配する必要はないよ。俺が好きなのは七海だけだ』


昨日言ってくれた大好きな人の甘やかな声が頭の中で響く。
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