冬の王子様の想い人
「まったく、少しだけよ。ふたりのクラスには連絡しておくから。原口さんは五時間目が終わったら下校でしょ? 友達に荷物を持ってきてもらう?」
「俺が取りにいく。それから七海を家まで送る」
「あなたは六時間目まであるでしょ。原口さんは体調不良なんだから早めに帰宅させてあげなさい」

千田先生がピシャリと言う。


「本当に大丈夫。心配してくれてありがとう」

そう言うと、ほんの少しカーテンを開けて雪華が姿を見せた。

「……本当に?」

どこか不安の混じる問いかけに大きく頷く。


過保護で誰より心配性な雪華は私がしんどい、と言ったらきっと早退してしまう。

今でさえ、付き添ってもらっているのにこれ以上は甘えられない。


「大丈夫。帰宅したら連絡するから、ね?」
「……帰ってる最中もなにかあったら連絡しろよ」

渋々といった様子で了承する。


「賢い恋人ね。じゃあ、お友達の名前を教えてもらえる? 担任の先生に言付けてもらうわ」

梨乃の名前を伝えた。


「七海が眠るまでここにいるから。それとごめん、こんな時になんだけど明日は用事があるから朝は一緒に行けないし、帰れないんだ」

少しだけ言いにくそうに告げられる。

「うん、わかった。付き添ってくれてありがとう」

そう言うと大きな手でそっと頭を撫でてくれた。


「……もう眠れ」

促されて目をゆっくりと閉じる。

さっきまでの不安な気持ちは不思議なほど霧散していた。
昨夜、あれほど寝付けずに考え込んでいたのが嘘のように、穏やかな気持ちで深い眠りにあっという間に吸い込まれていった。
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