冬の王子様の想い人
翌日は戦々恐々としながら登校した。

自意識過剰だと思いつつも、周囲を用心深く見回して学校までの道を歩く。

王子様にやり返されたらどうしようと今朝からずっと危惧している。


青蘭高校までの通学時間は四十分ほどで、そのうち二十分くらいは電車に揺られている。

ちなみに梨乃の最寄り駅は私の隣の駅だ。
図書委員の梨乃が朝当番や日直などお互いに用事がある日以外は毎日一緒に通学している。


治療した歯が疼いて昨夜はなかなか寝付けなかった親友は、寝坊をしたので少し遅れると連絡があった。

通学路ですれ違う同級生も普段と変わりなく、靴箱も教室内の雰囲気も自席もいつも通りでホッと胸を撫でおろす。


安堵の息を吐くと同時に抱きしめられた感触と近い距離を思い出し、頬が再びカッと熱を持った。
心なしか鼓動がいつもより速い気がする。


こんな反応はおかしい。まるで王子様にときめいているみたいだ。


ブンブンと勢いよく首を横に振って訂正する。


報復されないか緊張してるから、ただそれだけよ。


「おはよう、ナナ。朝からなにをやってるの? 百面相?」

カタンと椅子をひいて登校してきた梨乃が私の右斜め前の自席に座る。

「お、おはよっ」
「……頬、赤くない?」
「赤くないよ! き、今日は走ってきたから……歯は大丈夫?」
「大丈夫、痛み止めをのんできたから。それより昨日はどうだった?」
「き、昨日? な、なんで知ってるの!?」

声が裏返ってしまう。



「……ナナ、なにかあったわね?」

挙動不審すぎる態度を聡い親友が見逃してくれるはずはなく、昨日の出来事を洗いざらい告白するはめになった。
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