冬の王子様の想い人
こういう話はこれまで何度もあった。

同じ美化委員の先輩たちにもしつこく理由を聞かれたりしたがこれからの一年間を天秤にかけたのか、渋々私を補佐だと認めてくれて酷い態度もとられなかった。

ふたりにはこういった話は伝えていない。
伝えればきっととても心配して、任命した自分たちを責めるだろうから。


……雪華は特に過保護だし。


彼は親しくなった人間に対してとても真摯に接する。乱暴な物言いをしていても、親友の楠本くんをとても大事にしているのはよく見ればすぐにわかる。

最近知り合ったばかりの私にでさえ親切なのだから。


毎朝の通学がいい例で、今では下校もほぼ一緒だ。

特進科には放課後に特別授業や補講といった普通科にはない授業があり、受講必須のものや自由参加のものもある。

私と帰るためそれらを欠席している日もあり、きちんと受講するよう促すと思いきり不機嫌な表情を返された。

その理由は今でもよくわからないが、それ以上口を出さず授業については雪華に任せている。


「ちょっと! なんとか言いなさいよ」

考えに耽っていると焦れたように言われた。

「それは不自然だと思うので……いきなり交代するのはおかしいと思いませんか? そんなに補佐になりたいなら自身で委員長たちに言ったらどうですか?」

恐さもあったけれど明らかにおかしい主張なので言い返すと、癪に障ったのか、キッと睨み付けられた。
< 42 / 154 >

この作品をシェア

pagetop