冬の王子様の想い人
青蘭高校はそれほど校則が厳しくなく、生徒たちの化粧や髪型も行き過ぎと言えるものではない限りほぼ容認されている。

梨乃は毎日比較的きちんと化粧をしているが、私は眉とマスカラといった部分的なものしかしていない。

時折色付きリップが加わるくらいだ。

ちなみに運動部の千帆ちゃんに至っては汗でドロドロになるからとまったく化粧をしていない。


茶色い髪の先輩が睨みつけるようにもう一度問う。

「氷室くんは?」

先輩たちの目当てはやはりあのふたりなのね、と独り言ちながらできるだけ丁寧に返答する。

「授業が長引いているようでまだ来ていません」

嘘ではないし、これ以上答えようがない。余計な会話をせず、作業を進める。


「学年とクラスを教えていただけますか?」
「三年四組」

ベリーショートヘアの先輩が端的に答え、私は手にしていたメモに学年とクラスを記入する。


「ねえ、どうしてあなたが補佐なの? クラスも違うんでしょ?」
「……頼まれたので」
「だったら代わってよ。私たちが補佐をしたっていいわよね?」

茶色い髪の先輩がすかさず言う。


「……でも、先輩たちは美化委員ではないですよね」

指摘すると、先輩は唇を噛んだ。

「そんなの、あなたが私たちに頼んだって言えばなんとでもなるでしょ」


どうしてここまで突拍子のない考え方ができるのだろうか。たいして面識もない上級生に頼む下級生がいるなら教えてほしい。
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