冬の王子様の想い人
「箒の柄が長すぎて持ち上げにくいわ。爪がはがれそうだからちょっと持ち上げてくれない? 亜由美は塵取りを持ってて手がふさがってるし」
長い髪の先輩が言う。
「そんな地味でお洒落でもない格好でよく堂々とあのふたりの横に立てるわね。恥ずかしくないの?」
ふん、と小馬鹿にするように言われ、亜由美と呼ばれた先輩が隣でクスクス声を漏らす。
聞こえないふりをして、グッと唇を噛む。
確かに私は髪の手入れもきちんとできていないし、爪だって整えていない。
だけどけばけばしい爪と香水をあのふたりは好きじゃないかもしれないでしょ、と口にしたい衝動を抑え込み、箒の柄の部分を持ち上げようと深く屈みこんで、手を伸ばした。
柄を掴んで立ち上がる時、自分のスカートの裾を一部踏んでしまって、バランスを崩して前につんのめってしまう。
ダメだ、転ぶ……!
箒を瞬時に手放して両手で地面を抑えたけれど右足の脛の部分をすってしまった。
「いった……」
改めて右足を見ると、深めの擦り傷になって血が滲んでいた。地面が細かい砂地だったせいだろう。
「さっさと箒渡してくれない?」
転んだ私をクスクスと馬鹿にするような笑い声とともに見下ろされた。
負傷してしまった傷がジクジク痛みだすがこの人たちの前で弱い姿を見せたくない。
「……調子に乗ってるからそんな目にあうのよ。名前で呼ぶなんて図々しいにもほどがあるわ。アンタなんて特別でも大事な存在でもないんだから」
勝者のように意地悪く放たれた言葉。
そんなこと、わざわざ言われなくても十分わかっている。
長い髪の先輩が言う。
「そんな地味でお洒落でもない格好でよく堂々とあのふたりの横に立てるわね。恥ずかしくないの?」
ふん、と小馬鹿にするように言われ、亜由美と呼ばれた先輩が隣でクスクス声を漏らす。
聞こえないふりをして、グッと唇を噛む。
確かに私は髪の手入れもきちんとできていないし、爪だって整えていない。
だけどけばけばしい爪と香水をあのふたりは好きじゃないかもしれないでしょ、と口にしたい衝動を抑え込み、箒の柄の部分を持ち上げようと深く屈みこんで、手を伸ばした。
柄を掴んで立ち上がる時、自分のスカートの裾を一部踏んでしまって、バランスを崩して前につんのめってしまう。
ダメだ、転ぶ……!
箒を瞬時に手放して両手で地面を抑えたけれど右足の脛の部分をすってしまった。
「いった……」
改めて右足を見ると、深めの擦り傷になって血が滲んでいた。地面が細かい砂地だったせいだろう。
「さっさと箒渡してくれない?」
転んだ私をクスクスと馬鹿にするような笑い声とともに見下ろされた。
負傷してしまった傷がジクジク痛みだすがこの人たちの前で弱い姿を見せたくない。
「……調子に乗ってるからそんな目にあうのよ。名前で呼ぶなんて図々しいにもほどがあるわ。アンタなんて特別でも大事な存在でもないんだから」
勝者のように意地悪く放たれた言葉。
そんなこと、わざわざ言われなくても十分わかっている。