冬の王子様の想い人
「コイツの本気、頑張って受けとめてやって? ナナちゃん」


からかわれているようにしか思えないのは気のせいだろうか。


「桜汰、ナナで遊ぶなよ」
「ハイハイ、それよりナナちゃんに明日から特別授業があるって話したのか?」
「……今から話す」
「特別授業?」


階段を降りて靴箱に向かいながらふたりに尋ねる。指が絡められている事実は既に見過ごされている。

「そう、明日から終業式の前日まで通常授業終了後に二時間くらいあるんだ」

淡々と楠本くんが説明してくれる。


科目は英語や数学とそれぞれ選択するらしい。期末テストが終わったばかりだというのに休む間もなく、通常通りの六時間授業をこなしてさらに授業……その勉強量に驚く。

さすがは特進科、それなのにこのふたりには悲壮感がない。


「すごいね、私だったら嫌で仕方ないのに……さすが特進科トップ」

感嘆の声を上げてふたりを見ると、雪華が眉間に皺を寄せた。

「ナナと一緒に帰れないんだぞ? 嫌に決まってるだろ!」


……ちょっと話の論点が違う気がする。


「いいか、寄り道せずにきちんと帰るんだぞ。帰宅したら教えろよ?」
「いや、雪華。それ一歩間違えたらストーカー」

楠本くんが冷静に突っ込む。


「……梨乃と帰るから」

心配しなくても大丈夫、と言いかけた時、ふとひとつの案が浮かんだ。


「ナナ?」
「あ、ううん! なんでもない。ほら、早く帰ろう」

明るくそう言い切った。
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