溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

理解だってできない。いやはや、どうやったら理解できるだろうか。

『俺の婚約者になってくれないか』

三日前の夜勤明けの朝にもまったく同じことを言われて、襲いくる眠気と闘っていた頭に衝撃が走った。

フリーズしている私を見てクスッと笑うと、篠宮先生は『返事は今度聞くから』と言って多くを語らずに立ち去ったのだ。

その後家に帰って寝て起きて冷静になると、きっと篠宮先生も当直明けで頭がおかしくなっていたんだという考えに行き着いた。

そうじゃなきゃ、明らかにおかしいでしょう?

もし仮に恋人になってと言われたのなら、まだ理解できる。いや、篠宮先生が私を好きだとは思えないから、そう言われたところで結局は信じられないのだが理解度の問題だ。

婚約者というのは、まったく理解できない。

「あの、それは、どういう意味でしょう?」

「言葉通りの意味だが」

正気なの?

「どういうつもりで仰られているのかはわかりませんが、からかうのはやめて下さい」

「からかってなどいないよ。俺と結婚してほしい」

職場の廊下の片隅で、思ってもみない相手からの突然のプロポーズ。仮にもし本物の恋人同士だったなら、ムードもなにもあったもんじゃない。

いったい、どういう思考回路をしているのだろうか。

エリート外科医と呼ばれる篠宮先生が、庶民の看護師の私にプロポーズするなんて。

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