溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
私にとって彼は仕事をする上での上司、同僚でしかないのだ。
「今夜空いているか?」
「今夜……?」
「一度ちゃんと話したい。さすがに今ここでゆっくり話をすることはできないからな。誰が聞いているかわからないし」
この時だけ明らかに周囲を意識するように、人差し指をピンと立てて口元にあてがう彼。その姿はまるで子どもみたい。それでいて色気もあるから、意識していなくてもドキッとする。
さっきの言葉だって、誰が聞いているかわからないのによくそんなことが言えますね。なにも知らない人が聞いたら、完全に誤解させていますよ。
女だらけの職場では、噂が回るのは光の速度よりも早いのだ。
しかしこの言い方だと、事情があるということなのだろう。裏を返せば、俺と結婚してほしいのくだりは人に聞かれても構わないということだと私は解釈した。
。色々と順番がおかしすぎてもはや理解不能。いや、理解することさえも脳が拒否している。
「お断りします」
「え、は?」
それまで笑顔だった篠宮先生が大きく目を見開いた。まさか断られるとは思っていなかったのだろう。
この人は女性を意のままに操ることができるという考えの持ち主なのだろうか。
この容姿とハイスペックなエリート外科医という肩書きがあれば、なんでも思い通りになると?
わからないけれど、どこか自信に満ち溢れた態度がそう思わせる。
結婚をちらつかせば、誰でも飛びつくと?