溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「話はそれだけですか? 忙しいので失礼します」
もうこれ以上振り回されたくない。変なことに巻き込まれたくない。事情があって結婚をほのめかすのならば、私じゃなくてもいいはずだ。
私のことが好きだというのなら話は別だけど、そんな素振りは一切感じられなかった。
背後から突き刺すような居心地の悪い視線を感じる。追いかけてきているのか、リノリウムの白い床を鳴らす足音がした。
足早に歩いている私の隣に並ぶと、彼はフッと口元をゆるめて微笑んだ。
その横顔には自信と余裕がたっぷりで、育ちの良さまでうかがえる。
「仕事が終わったら迎えに行くよ」
どういうつもりで、そんなことを言うの。いくら考えてみても答えにたどり着かない。私の頭では処理しきれないことが現実に起こっているせいだ。
断る隙を与えず、その長い脚で颯爽と私を追い抜くと、篠宮先生は病棟をあとにした。