溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
この人が柊製薬のご令嬢で、そして優の婚約者。
「きみは天音さんを知ってるね?」
院長は私に同意を求めるように強い口調で言う。
「いえ、初対面です」
「ウソをつくんじゃない」
そう言ったのは目の前の男性で、敵を見るような目で私を見ていた。
いったい、誰なのこの人は。
私に対して負の感情を抱いていることは火を見るより明らかだ。
「この方は柊製薬の会長だ。幼少期からの長い付き合いでね、今でも仲良くさせてもらっているんだよ」
「はぁ、そうですか……」
「そんなことはどうでもいいだろ。天音を傷つけるヤツは、たとえ女であろうと容赦はしない。正直に言ったほうが身のためだ」
「お、お父様……」
「天音、こんな女と顔を合わせるのもツラいだろう? 姑息なマネをしてお前を傷つけたヤツは、全員地獄行きにしてやるからな」
なにがなんだかさっぱりわからなくて首を傾げる。
けれど話の内容から察するに『姑息なマネをしてお前を傷つけたヤツ』というワードに、どうやら私が関係しているらしいことはわかった。
「さっさと白状しろ」
「さっきから仰られていることの意味がわかりません」
さっぱり理解できていない私を見て院長が口を挟んだ。
「天音さんの前でMIYAMOの宮本くんのことを『女好きの遊び人。あんな男性と結婚なんてしないほうがいい。あなたの格が下がる。あなたの他にもたくさんの女性と関係がある』などと侮辱した女性がいてね」