溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「突然なんだが、きみに聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと、ですか?」
デスクのそばに立つ院長に目をやる。彫りの深い目元が印象的な院長は、経営に関してすごくシビアなことで有名だ。
数年前まで現役の外科部長だったが、院長になってからは医療よりも経営を第一に考え、今では数億円の黒字を出しているやり手。
「そこにおられるお嬢さんに見覚えは?」
「?」
言葉の意図がまったくわからない。
それでも視線は自然と向かい側に座る人たちのところへ向いた。
院長と同じかもしくは少し上くらいの白髪混じりの初老の男性と、二十代後半くらいの清楚系の女性。女性はうつむいているが、男性はじっとこっちを見つめている。
もちろん見覚えはない。
「ど、どちら様でしょうか?」
「柊製薬のお嬢さんの天音さんだ」
「えっ!?」
ちょ、ちょっと待って!
なんてタイムリーな。
ううん、そうじゃなくって!
天音さんと呼ばれた人は小顔で美人な女性だった。黒のワンピース姿で、固く握った両手を膝の上に乗せている。すぐに折れてしまいそうなほど華奢でか弱い印象。
私とは正反対で、女性らしくおっとりしていて、お嬢様という言葉がピッタリ当てはまっている。