溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「本気なんですか?」
「もちろん。冗談は言わない主義でね」
冗談とも本気とも取れる声色。口元は笑っているけど目は本気だ。だからこそ私は、どうしても理解できない。
「どうして、ですか? なにか事情がおありなんですよね?」
「事情?」
「私に結婚を申し込まなければいけないほどの、のっぴきならない事情です」
篠宮先生は私の言葉にしばし呆然としたあと、お腹を抱えて盛大に噴き出した。
「そんなの、ないよ。俺はきみがほしい。だから結婚したい。それだけだ」
「なっ……!」
「それじゃダメなのか?」
「わ、私は、お互いがお互いを大切に想い合って、毎日笑って過ごせるような、そんな関係に憧れてるんです」
「十分に愛してやるつもりだが?」
「そ、そんなことを言ってるんじゃありません!」
「なんだ? 俺が相手じゃ不服なのか?」
「違います」
「じゃあいいじゃないか」
「そういう問題でもないんです。結婚っていうのは、お互いが好き同士であることが大前提だと言いたいんです」
間違ったことは言っていないはずなのに、体の芯がカーッと熱くなる。
それ以前に、私は篠宮先生と恋愛をする気はない。好きになるつもりも、お近づきになりたくもない。
愛してやるつもりだなんていう口説き文句に、私が惑わされるとでも思ったら大間違いよ。