溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「味はどう?」
「美味しい、です……」
正直、味なんてまったくしない。食べているというよりも、咀嚼して飲み下しているといった方が正しい。
豪華な前菜の盛り合わせには、これまでに食べたことのない食材が使われていて私は目をむいた。
前菜のお供に豪勢に盛られたキャビアと、赤ワインベースのソースがかかったフォアグラ乗せ鴨のテリーヌ。最高級肉を使用したパテに、高級有機野菜のサラダ。
この時期に珍しいマスクメロンには当然のごとく生ハムが鎮座している。
それらをソムリエが選んで目の前で注いでくれた白ワインと一緒に流し込む。
お酒なんて飲む気分じゃないけれど、せっかくだからと強引に勧められて断りきれなかった。さすが一流ソムリエのセレクト。料理とワインが絶妙にマッチして、味がわからないのにとても美味しい。
雰囲気にもこの場所にも篠宮修という目の前のこの男にも、完全にのまれそうになってしまっている。
この人のペースに乗せられてはいけない。そう思うのに抗えないなにかがある。
目が合って微笑まれただけで、どうしてだろう、なぜだか負けたような気になるのだ。
デザートを食べ終え、ようやくお腹が落ち着いた頃、篠宮先生は早速本題に入った。
「朝のことだけど、俺は本気だから」
篠宮先生は紙ナプキンで口元を拭いながら、まっすぐに私の目を見つめる。