花とバスケと浴衣と
翌日、約束通り類先輩は4限目の教室まで千花を迎えに来た。周りの女子たちは突然の類先輩の登場にキャーキャー言っていた。そうなるよね…と千花が思っていると、隣にいたミマが呟いた。
「何かあからさまだね。」
「まぁね。」
ミマを見つけた類先輩が、教室に入って迎えに来た。
「こんにちは、類先輩。」
「ミマちゃん、今日は変わったことなかった?」
「今類先輩がここにいることが一番変わったことですけど。」
「だろうね。」と笑った類先輩は、千花の頭にポンと手を乗せた。驚いてビくんとなった千花を見てクスッと笑って言った。
「千花ちゃん、行こうか。」千花が何とか頷くと、類先輩はあろうことか千花の頭を撫でてから千花の右手を取った。ミマは隣でクスクスと笑っている。
「ミマちゃん、何笑ってんの?」
「類先輩ってそんなキャラでした?」
「そうだよ。オレ、彼女には甘々なの。」こともなげに言う類先輩に、千花は頭を押さえたくなった。
「類先輩、千花は結構恥ずかしがり屋だから、あんまりベタベタ触ってると嫌われますよ。」
「そうなの?」千花を覗き込む類先輩に
「恥ずかしいです。」と千花が応えると、
「見てるこっちが恥ずかしいよ。」とミマが呟いた。
「じゃぁできるだけ気をつけます。でも、千花ちゃん可愛いから、オレのものだってアピールしとかなきゃさ。」
「はいはい、ごちそうさまです。」ミマは適当に類先輩をあしらった。
「ミマちゃん、オレ今日練習行かないって言っといて。」
「わかりました。」
「じゃぁまたね。」
「また明日ね、千花。健闘を祈るよ。」と笑いながらミマは教室を出て行った。
「行こっか。」と類先輩は凝りもせずに千花の手を引いて教室を出た。何だか知らないが楽しそうな類先輩を見て、千花は思わず言った。
「類先輩、何か楽しそうですね。」
「そりゃそうだよ。可愛い彼女とデートなんだから。」満面の笑みで言う類先輩に、千花は色々考えるのが馬鹿らしくなって笑った。そうだ。これはデートなんだから後のことは考えずに、とにかく楽しもう。
「ちょっと歩くんですけど、良いですか?」
「良いよ。何がオススメなの?」
「えっと…色々あるんですけど、私はタルトセットを頼むことが多かったかな?」
「タルトセット?」
「ケーキとかタルトとかプリンとか、洋菓子メインの喫茶店ですけど、大丈夫ですか?」
「うん。未知の領域。」
「…ですよね。」
「でも、楽しみだよ。千花ちゃんのオススメのお店。」
校門を出てしばらく歩くと、類先輩のスマホがなった。繋いだ手を離して、
「ちょっとごめんね。」と電話を確認した類先輩は、チッと舌打ちをした。千花が類先輩を見ると、しぶしぶ電話に出た。
「もしもし?…あぁ。…今日は無理。え?…そう、デート中。…そりゃそうだろ。…あ?何でだよ。…うるせーなー。もう切るぞ。」類先輩はぷつっと電話を切った。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、圭悟の嫌がらせ電話。」
「圭悟?」
「33のメンバーの長谷部圭悟。ミマちゃんからデートだから練習行かないって聞いたんじゃない?」なんだそれ?と思って千花が笑っていると、今度は千花のスマホが鳴った。表示を見ると、長谷部圭悟となっていた。千花が思わず、画面を類先輩に見せると、類先輩は嫌そうな顔をして、通話ボタンを押した。
「圭悟、オレの彼女に何の用事だよ。(何でお前が千花ちゃんの携帯に出るんだよ!)」
漏れ聞こえてくる長谷部先輩の大きな声に千花は思わず笑った。
「千花も隣で笑ってるよ。」え?今名前…。
「だからそうだって言ってんだろ。何で一々お前に報告しなきゃならねーんだよ。もう切るぞ。」類先輩は、通話を切って、千花にスマホを返してきた。
「ったく、ホントにうるさい奴だ。何で圭悟に千花ちゃんとデートすることを報告しなきゃなんねーんだよ。」迷惑そうな顔をする類先輩に、千花は思わず、
「類先輩、愛されてますね。」と笑った。キョトンとした顔の類先輩は、
「ホントはた迷惑な愛だわ。さ、行こうか」と笑った。千花は頷いて、差し出された手を今度は戸惑うこと無く握った。

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