花とバスケと浴衣と
会計を済ませると、類先輩は千花に言った。
「ごちそうさまでした。」
「とんでもないです。」
「帰りますか?」
「はい。類先輩のお宅ってどの辺りですか?」
「こないだ行ったよ。」
「え?」
「ばあちゃんと同じマンション。部屋は別だけど。」
「そうだったんですか?じゃぁ毎日電車ですか?」
「電車だったり、自転車だったり。」
「今日は電車ですか?」
「うん。」
「じゃぁ駅まで行きましょ。」
「いや、千花ちゃんの家まで送るよ。」
「そんなことしたら遠回りだし、まだそんなに遅くもないんだから、送ってもらわなくても大丈夫ですよ。」千花が恐縮して言うと、類先輩は真剣な顔で、
「いや、彼女を送らないとかそれこそ有り得ないから。」と言って歩き出した。慌てて千花が追うと、類先輩は言った。
「千花ちゃんは、もうちょっとオレに甘えてくれても良いのに。」
「こういうの慣れてないんで…戸惑っちゃうんです。」
「そういう謙虚なところも可愛くて良いけど、もっとオレを頼ってくれると嬉しい。もっと千花ちゃんの色んな話も聞きたいし、くだらない話もしたいって思ってる。」
「私も類先輩の色んな話聞きたいです。」
「じゃぁちょっとでも長く一緒にいられるように家まで送らせてよ。」この人、ホントにうまいな、と思いながらも、千花は、
「わかりました。お願いします。」と答えた。類先輩は嬉しそうに頷いて、千花の右手を取った。千花が驚いて見上げると、
「見せつけたいんじゃなくて、オレが千花ちゃんと手繋ぎたいだけ。駄目?」いたずらっぽい目で見られ、千花は頬を赤くして首を横に振った。
「駄目じゃないですけど、やっぱりこういうのってちょっと恥ずかしいです。」
「そういうとこも可愛い。」と類先輩は上機嫌で手を繋いで歩いた。

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