花とバスケと浴衣と
8. チーズケーキ
類先輩は、今週レポートやバイトで忙しいらしく、千花の様子を見に来れないと言っていた。千花は、何かあればすぐに連絡するので心配はいらないと、類先輩に伝えてあったが毎晩のように、類先輩からはラインで連絡があり、
「今日は変わったこと無かった?」と聞いてくれる。千花は有り難いなと思いながらも、そんなに心配しなくても大丈夫なのに…と思っていた。水曜の晩に類先輩からきたメッセージに、千花は少し驚いた。いつも通りに今日の様子を聞かれ、何もないと答えた。
「良かった…早くレポート終わらせて千花ちゃんに会いたいな。」どうして??千花は戸惑ってしまい、中々返事を打てずにいた。
「千花ちゃん、もしかして照れてる?」続けざまに来た類先輩からのメッセージともじもじ顔のスタンプを見て、千花は、真に受けてしまった自分を呪いたくなった。「私も会いたいです」とか適当に合わせてすぐに返しておけば良かった。仕方なく、正直に
「何て返すのが正解かわからなくって…。」と戸惑った表情のスタンプを送った。
「私も。」ハートマークのスタンプが連続で送られてきて、
「これがベストかな?」とニヤニヤ顔のスタンプが届いた。千花は、敬礼して「了解」と
吹き出しのついたスタンプを送った。爆笑している様子のスタンプが返ってきて、千花はホッとした。
「レポートがんばってくださいね。」
「ありがと。おやすみ。」
「おやすみなさい。」千花がメッセージを返していると、トントンと部屋のドアが叩かれた。誰だろう?と思いながらドアを開けると、弟たちだった。一番上の弟の裕樹が
「ねえちゃん、今ちょっと良い?」と言った。
「どうしたの?皆揃って。」何故か少し不満顔の妹の花音を見ながら聞くと、
「おじゃましまーす。」と高校生の裕樹と中学生の双子の雅樹と花音が入ってきた。なんだろう?この状況、と思いながら、雅樹がドアを閉めると、花音が言った。
「お姉ちゃん、イケメン彼氏出来たってホント?」あ、そういうことか。健くん喋ったな。そして、裕樹が二人に言ったんだな、面倒くさいなと千花は思いながら、答えた。
「まぁね、で、それがどうしたの?」
「まじかよ!」
「何で花音に先に教えてくれなかったの?」
「どんな奴だよ。」口々に文句を言う三人に、千花はため息を付き、
「あのねー。何であんたたちに一々報告しなきゃいけないのよ。」
「それは…。」
「だって…。」
「当たり前じゃん!変なやつだったらオレがぶっ飛ばす!」雅樹の一言に、千花は思わず笑った。
「まさくんありがとう。でも、大丈夫だから。」千花に一番懐いている雅樹の言葉に千花はごめんね、と心のなかで謝った。
「すっげーイケメンだったって健が言ってたけど。」
「花音もイケメンに会いたい。」興味津々の二人に、千花はため息をついて、
「そのうち紹介する。」と言った。こうでも言っておかなければ後がうるさい。
「そのうちっていつ?明日?明後日?」と裕樹はガンガン喰いついてくるし、花音は
「写真は写真。顔だけでも見せてよ。」とうるさい。
「もう、うるさいな、二人共。色々忙しいのよ。時間が取れたらまた教えるから。」
「えー、写真―。」しつこい花音に、そう言えば写真なんかないなと思った。
「ないよそんなの。」
「何でないのよ。写真ぐらい見せてよ、千花姉のけちー。」
「ケチじゃなくて、ホントに写真なんかないんだって。」
「送ってもらってよ。」有り得ない。でも、ちょっと欲しいかもと思ってしまう千花がいた。
「嫌だよ。」
「待受にしないの?」
「そんなこっ恥ずかしいことするわけ無いでしょ。」即答すると、
「えー?イケメンだったらいいじゃん。じゃぁ花音に送ってもらってよ。」
「バカなこと言わないの。」花音の相手を適当にしていると、突然雅樹が言った。
「いつからつきあってんの?」何か、目が怖いんですけど、まさくん。
「まだ最近だから…。」
「ふーん。写真撮ったらオレにも頂戴。」
「まさくんまでそんなこと言わないでよ…。」一番おとなしくて、千花を慕っている雅樹に言うと、
「変なやつだったらオレがすぐに別れさせるから。」と恐ろしいことを言った。いや、心配しなくても、後10日位で別れますから。
「始まったよ、まさのシスコン。」裕樹の一言で雅樹は
「当たり前だろ!大事な姉ちゃん変なやつに掻っ攫われて平気なのかよ、祐樹は。」
「変なやつだったらオレも手を貸す。」
「バカなこと言ってないの。さぁ、もう行きな。あんた達、もう宿題は済んだの?」長女らしくさっさと弟たちを追っ払う。
「ちゃんと終わってるよ。」雅樹の答えを聞き、
「花音は?」
「やったって。多分。」やっぱり…。いつも適当にごまかす花音。
「多分じゃないよ。もう、祐樹ちゃんと教えてあげなよ。」三人を部屋から追い出しながら、千花は言った。ガヤガヤした3人が部屋から出ていって、千花はフーっと一息ついた。健くんのおしゃべり…と思いながら、この3人には絶対類先輩をあわせないようにしなきゃな、と千花は思った。そういえば、チーズケーキを食べたいと言われていたことを千花は思い出した。明日はバイトもないので、久しぶりにチーズケーキを作ってみようと千花は思った。

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