花とバスケと浴衣と
翌日、夕食の片付けを終えて、久々に千花がキッチンに立っていると、雅樹が近づいてきた。
「何作ってんの?」
「チーズケーキ。」
「彼氏に食べさせるの?」
「上手く出来たらね。」
「じゃぁ失敗するように祈ってる。」
「まさくん…。」
「冗談。できたらオレにもちょうだいね。」と言って出て行った。千花はいつもお菓子を作る時は大量に作っていた。弟妹や、その友達もよく遊びに来るし、オーブンをフル稼働させて、友達に配りやすいスクエア型のベイクドチーズケーキをまず鉄板2つ分焼いて、軽い食感のスフレを小さな紙コップに入れて焼いた。甘い匂いがキッチン中に漂ってきて、千花は幸せな気分になった。やっぱりお菓子作りは千花のストレス発散法だ。家族も喜んでくれて、友達も喜んでくれる。明日、バイト先の店長夫妻にも味見をしてもらおうかな?と千花は思った。
「千花が作ってるの久しぶりね。」仕事から帰ってきた母が言った。
「こないだ久しぶりに健くんに会って、チーズケーキリクエストされちゃったの。」
「健くんって、祐樹の友達の?」
「そう。」
「呆れた。彼氏にでも作ってるのかと思って期待したのに。」
「ははは。ま、そのうちね。」と千花は笑ってごまかした。こんな短期間の彼氏のことを、家族には知られたくない。ベイクドチーズケーキを冷蔵庫へ入れ冷やし、小さなスフレもテーブルに並べて、「触るな!」の看板を久々に立てて千花はお風呂へ入った。
髪を乾かして部屋に戻ると、スマホが着信で光っていた。類先輩の表示に驚きながら、千花は電話を取った。
「もしもし?」
「千花ちゃん?良かった。」少し焦った様子の類先輩に千花は何かあったのかと思った。
「どうかしました?」
「いや、メッセージ送ったけど返事がないし、既読もつかないから、何かあったのかと思って。」あ、しまった。ケーキ作りの最中もずっとスマホを放ったらかしにしていた。
「すみません。お風呂入ってました。」
「そうなんだ。心配したよ。」
「すみません。でも、そんな心配するような状況、何も無いですよ。」千花がクスクス笑いながら言うと、類先輩は、
「そうなんだけどさ、いつもすぐ返信くれてたのに2時間も返信無いと心配じゃん。」
「あ、すみません。部屋に置きっぱなしにしてて。」と千花が話していると、突然ドンドンとドアをノックしてすごい勢いで花音が入って来て叫んだ。
「千花姉、あれ、まだ食べちゃ駄目?」電話をしている千花を見て、花音はあっという顔をした。千花は電話口を押さえて、言った。
「ベイクドはもうちょっとしっかり冷やしてから切るから、スフレは一個なら食べてもいいよ。」
「ごめん、電話中に…。ありがと。」と言って花音はぱたんとドアを閉め、階段を降りていった。
「妹さん?」電話の向こうで類先輩が笑いながら聞いてきた。
「すみません。うるさくって。妹です。」
「いくつ?」
「中3です。」
「千花ちゃんって弟もいたよね?」
「弟が二人と妹が一人います。」
「そうなんだ。会ってみたいな。」
「嫌です。」
「何で?」
「だって…みんな煩いから。」
「えー、いいじゃん。そのうち会わせてよ。」
「また機会があれば。」
「で、何を食べちゃ駄目だったの?」
「あ、チーズケーキです。類先輩作ってって言ってたの思い出して。」
「ホントに作ってくれたんだ。」
「約束しましたからね。」
「あ、ちょっと妹に変わってよ。オレのだから食べないでって言うから。」
「類先輩の分はちゃんと置いてありますよ。」
「ホントかな?あの勢い。」
「大丈夫ですって。花音はお姉ちゃんが怒ったら怖いって知ってますから。」
「なら良いけど。オレには明日くれるの?」
「明日大学来られますか?」
「うん。レポート出しに行く。」
「終わったんですか?」
「もう一息。今バイトだからさ。」
「え?あ、すみません。バイト中に。」
「休憩中だから大丈夫。でも、良かった。今繋がって。」
「すみません。返信できなかったばっかりに。」
「良いんだ。千花ちゃんの声聞けて元気出たし。」
「類先輩…。」
「明日はご褒美が待ってるって分かったし、頑張って働いて、レポートも仕上げます。」
「チーズケーキですか?」
「違うよ、千花ちゃんに会えるってこと。」
「え?」
「早く会いたいな。」
「私も会いたいです。」思わず漏れてしまった本音に、千花が戸惑う間もなく、類先輩は笑いながら言った。
「そうそう、いい返事だ。じゃ、明日いつ行けるかわからないからまた連絡する。」
「わかりました。私は4限までずっと授業あるんで。」
「わかった。じゃ、またね。妹から死守しといてよ、オレのチーズケーキ。」
「大丈夫ですって。バイトとレポートがんばってくださいね。」
「うん。ありがと。おやすみ、千花ちゃん。」
「おやすみなさい。」
電話を切ると、千花はフーっと大きく一息ついた。「早く会いたいな」なんて電話口であんなに甘い声で言わないでよ…。会いたいって本音がでちゃうじゃない…。千花は、隠しきれない胸の鼓動を感じつつ、ベッドに顔を埋めた。
「何作ってんの?」
「チーズケーキ。」
「彼氏に食べさせるの?」
「上手く出来たらね。」
「じゃぁ失敗するように祈ってる。」
「まさくん…。」
「冗談。できたらオレにもちょうだいね。」と言って出て行った。千花はいつもお菓子を作る時は大量に作っていた。弟妹や、その友達もよく遊びに来るし、オーブンをフル稼働させて、友達に配りやすいスクエア型のベイクドチーズケーキをまず鉄板2つ分焼いて、軽い食感のスフレを小さな紙コップに入れて焼いた。甘い匂いがキッチン中に漂ってきて、千花は幸せな気分になった。やっぱりお菓子作りは千花のストレス発散法だ。家族も喜んでくれて、友達も喜んでくれる。明日、バイト先の店長夫妻にも味見をしてもらおうかな?と千花は思った。
「千花が作ってるの久しぶりね。」仕事から帰ってきた母が言った。
「こないだ久しぶりに健くんに会って、チーズケーキリクエストされちゃったの。」
「健くんって、祐樹の友達の?」
「そう。」
「呆れた。彼氏にでも作ってるのかと思って期待したのに。」
「ははは。ま、そのうちね。」と千花は笑ってごまかした。こんな短期間の彼氏のことを、家族には知られたくない。ベイクドチーズケーキを冷蔵庫へ入れ冷やし、小さなスフレもテーブルに並べて、「触るな!」の看板を久々に立てて千花はお風呂へ入った。
髪を乾かして部屋に戻ると、スマホが着信で光っていた。類先輩の表示に驚きながら、千花は電話を取った。
「もしもし?」
「千花ちゃん?良かった。」少し焦った様子の類先輩に千花は何かあったのかと思った。
「どうかしました?」
「いや、メッセージ送ったけど返事がないし、既読もつかないから、何かあったのかと思って。」あ、しまった。ケーキ作りの最中もずっとスマホを放ったらかしにしていた。
「すみません。お風呂入ってました。」
「そうなんだ。心配したよ。」
「すみません。でも、そんな心配するような状況、何も無いですよ。」千花がクスクス笑いながら言うと、類先輩は、
「そうなんだけどさ、いつもすぐ返信くれてたのに2時間も返信無いと心配じゃん。」
「あ、すみません。部屋に置きっぱなしにしてて。」と千花が話していると、突然ドンドンとドアをノックしてすごい勢いで花音が入って来て叫んだ。
「千花姉、あれ、まだ食べちゃ駄目?」電話をしている千花を見て、花音はあっという顔をした。千花は電話口を押さえて、言った。
「ベイクドはもうちょっとしっかり冷やしてから切るから、スフレは一個なら食べてもいいよ。」
「ごめん、電話中に…。ありがと。」と言って花音はぱたんとドアを閉め、階段を降りていった。
「妹さん?」電話の向こうで類先輩が笑いながら聞いてきた。
「すみません。うるさくって。妹です。」
「いくつ?」
「中3です。」
「千花ちゃんって弟もいたよね?」
「弟が二人と妹が一人います。」
「そうなんだ。会ってみたいな。」
「嫌です。」
「何で?」
「だって…みんな煩いから。」
「えー、いいじゃん。そのうち会わせてよ。」
「また機会があれば。」
「で、何を食べちゃ駄目だったの?」
「あ、チーズケーキです。類先輩作ってって言ってたの思い出して。」
「ホントに作ってくれたんだ。」
「約束しましたからね。」
「あ、ちょっと妹に変わってよ。オレのだから食べないでって言うから。」
「類先輩の分はちゃんと置いてありますよ。」
「ホントかな?あの勢い。」
「大丈夫ですって。花音はお姉ちゃんが怒ったら怖いって知ってますから。」
「なら良いけど。オレには明日くれるの?」
「明日大学来られますか?」
「うん。レポート出しに行く。」
「終わったんですか?」
「もう一息。今バイトだからさ。」
「え?あ、すみません。バイト中に。」
「休憩中だから大丈夫。でも、良かった。今繋がって。」
「すみません。返信できなかったばっかりに。」
「良いんだ。千花ちゃんの声聞けて元気出たし。」
「類先輩…。」
「明日はご褒美が待ってるって分かったし、頑張って働いて、レポートも仕上げます。」
「チーズケーキですか?」
「違うよ、千花ちゃんに会えるってこと。」
「え?」
「早く会いたいな。」
「私も会いたいです。」思わず漏れてしまった本音に、千花が戸惑う間もなく、類先輩は笑いながら言った。
「そうそう、いい返事だ。じゃ、明日いつ行けるかわからないからまた連絡する。」
「わかりました。私は4限までずっと授業あるんで。」
「わかった。じゃ、またね。妹から死守しといてよ、オレのチーズケーキ。」
「大丈夫ですって。バイトとレポートがんばってくださいね。」
「うん。ありがと。おやすみ、千花ちゃん。」
「おやすみなさい。」
電話を切ると、千花はフーっと大きく一息ついた。「早く会いたいな」なんて電話口であんなに甘い声で言わないでよ…。会いたいって本音がでちゃうじゃない…。千花は、隠しきれない胸の鼓動を感じつつ、ベッドに顔を埋めた。