花とバスケと浴衣と
授業が終わって、一度バイト先へ出向き、インターフォンを鳴らすと、奥さんがプレゼント用に紙袋に入れて準備してくれていた。
「ありがとうございます。」千花が微笑むと、奥さんが言った。
「仏間に飾ったの、もしできたら写真撮ってきて。実際に飾った所、私も見てみたいわ。」とことん商売人の奥さんらしい考えだな、と思いながら千花は、
「わかりました。聞いてみてオッケーもらえたら撮ってきます。」
「うん。無理にとは言わないけど、よろしくね。」と奥さんは送り出してくれた。
駅へ着くと、類先輩はいつもと違ってキョロキョロしながら千花を待っていた。千花が走って近づくと、ホッとした顔をして、類先輩も千花の方へ走ってきた。
「すみません。お待たせしてしまって。」
「千花ちゃん、ごめんなさい。もう怒ってない?」
「ちゃんと消してくれたんですよね?長谷部さんの分も。」
「うん。消したよ。でも、もう応援サークルの子には結構出回っちゃってて…。」
「知ってます。ミマが持ってたくらいですから。」
「それも全部消すようにお願いしたほうが良い?」
「出来ればそうして欲しいですけど、類先輩ファンにしたら、類先輩の貴重な満面の笑みの写真、簡単に消してなんて言えないです。私が写ってることなんて関係ないと思うんで…。だから、もう良いです。類先輩と長谷部さんの携帯から消えたなら。」
「千花ちゃん…。」
「後でファンの子から転送してもらうとかなしですよ。」
「わかってる。ありがと。」申し訳無さそうな顔をする類先輩に、千花は思わず、
「もう、そんな顔しないで下さいよ。何か私が悪いことしてる気分になるじゃないですか。」
「ごめん…。行こうか。荷物持つよ。」と類先輩は、千花の持っていた紙袋を取ろうとした。千花は
「あ、これは私が持ちます。類先輩にはもう一つの方をお願いしてもいいですか?」と言いながら、千花はコインロッカーへ向かった。類先輩は不思議そうな顔をして、ついてきた。千花がロッカーから、もう一回り大きな紙袋を取り出すと、類先輩は驚いた様子で聞いた。
「これ、いつ入れにきたの?」
「今朝です。この荷物持って一日大学ウロウロするの面倒だったんで。」
「言ってくれたら、オレ、受け取りに行ったのに。」
「昨日、怒ってたんで、荷物持っていくって言ってたのに、私が荷物持ってないのに気がついたら類先輩ショック受けるかなって思って…。ちょっとした仕返しです。」
「…千花ちゃん、無視だけで十分ダメージ受けてます。」
「ミマにも大概にしときなよって怒られました。」
「オレもフジさんに怒られた。」
「え?そうなんですか?」
「ミマちゃんの連絡先教えてくださいって泣きついたら、事情を聞かれて、コンコンとお説教。」苦笑いをする類先輩が、千花は思わず可愛そうになった。
「そうだったんですか…。何かすみません。」
「いや、浮かれすぎてたオレが悪いんだ。ごめんね。重たいのにこんなところまで朝早くに持ってこさせちゃって。」
「いえ、私が勝手に決めたことなんで。」紙袋を持った類先輩は、もう片方の手を千花に差し出した。
「行こう。ばあちゃんが待ってる。」千花は出された手をギュッと握って答えた。
「そうですね。」

< 40 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop