花とバスケと浴衣と
一体何を考えてるんだ!と思いながらも、お祖母様の手前、これ以上怒るわけにも行かず、千花は赤くなった顔を押さえながら、やっとキッチンへ入った。きれいに片付けられたキッチンで、お祖母様にオーブンの使い方を教えてもらった。千花は許可を得て手を洗い、買ってきた材料の計量にかかった。何故かお祖母様のエプロンを借りて、手を洗う類先輩を見て、
「類先輩も作るんですか?」と千花が聞くと、
「え?手伝っちゃ駄目?」と意外そうな顔で聞いた。千花は、少し考えて、
「えっと、じゃぁ、この粉を、ふるってもらってもいいですか?」とお願いした。類先輩は嬉しそうに
「分かった。任せて。」と粉の前に立った。決して広いとは言えないキッチンに、大きな男の人がお祖母様の可愛らしい小さなエプロンをつけて、「粉を振るう」の意味が解らず、固まっている。千花は思わず、吹き出しそうになりながら、こぼれても良いように、広告を広げ、その上にパラフィン紙を載せて、ザルに小麦粉を入れて、類先輩に手渡した。
「軽くトントンってしてもらったら落ちてくると思うんで、その紙の上でやってもらえますか?」嬉しそうな顔で、
「分かった。」と言って、大きく手を揺するので、紙からはみ出てこぼれてしまった。千花が
「こぼさないように気をつけて下さいね。」と言うと、類先輩は慎重に慎重に紙からこぼさないように丁寧にふるってくれた。計量が終わり、千花は卵を卵黄と卵白に分け、クリームチーズと牛乳を湯煎にかけ、とかして混ぜながら、オーブンを180℃に設定し、予熱した。チーズが解けてまざったのを確認し、すぐに、小さなボールに水をはり、冷ました。鉄板の上にココット皿と紙カップを並べ、ヤカンを借りてお湯を沸かすと、粗熱が取れたチーズ生地に卵を一つずつ入れ、よく混ぜた。類先輩が振るってくれた小麦粉を入れて、ゴムベラで混ぜるようにお願いすると、ハンドミキサーで卵白を泡立て始めた。ウイーンと大きな音を立てながら、しっかり角が立つまで泡立てると、ビビりながら少しずつ粉を入れている類先輩に
「一気に全部入れて大丈夫ですよ。」と声をかけ、戸惑っている類先輩を見かねて、千花は一度手を止めて、
パラフィン紙を持って、ざざっと粉を入れ、ゴムベラでさっさと混ぜると、レモン汁を入れた。
「こんな感じで混ぜててもらえますか?」と千花が言うと、類先輩は頷いて、混ぜてくれた。千花は卵白を少しずつチーズ生地に入れ、類先輩に混ぜてもらい、半分入れた時点で交代してもらった。ここからは混ぜすぎると膨らまない。千花は残りの卵白をすべて入れるとさっくりと混ぜ、そのままココットと紙コップに入れた。予熱が出来たオーブンに鉄板を入れ、ヤカンに湧いたお湯をはって、オーブンに入れると、千花は洗い物に取り掛かった。類先輩は聞いた。
「これで焼けるの待つだけ?」
「そうですよ。意外と簡単でしょ?」
「もっと色々手伝いたかった…。」さも残念そうにいう類先輩。
「えっと…じゃぁ次回は計量とか、卵白の泡立てとかもお願いします。」
「うん。あの白いやつオレもやりたい。」満面の笑みで答える類先輩を見て、どうも、卵白の泡立てをやりたかったということを理解した。次回があるとは思わないが、これで満足してもらえたらしく、千花はホッとして、洗い物を続けた。
「拭いていくね。」と布巾を持って隣に並び、最後まで手伝ってくれる類先輩に、
「ありがとうございます。」と千花はお礼を言った。

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