花とバスケと浴衣と
オーブンを覗き込んで、ケーキを真剣に見ている類先輩は、子供のようで可愛かった。様子を覗きに来たお祖母様も、クスクスと笑っている。
「何かいい匂いしてきた!」と嬉しそうな類先輩に、
「もうちょっとしたら膨らんでくると思いますよ。」と千花が答えると、類先輩は満面の笑みで
「楽しみ。」と答えた。この笑顔ホントに反則だよな…と千花が思っていると、お祖母様が
「千花さん、良かったらこっちで一服しない?」とリビングへ誘ってくれた。千花はお言葉に甘えてお祖母様がおられるリビングへ移動した。テーブルの上には千花がプレゼントしたアレンジが真ん中に飾ってあった。千花は気に入ってもらえて良かったな、と思った。
「今日はありがとうね。」
「いえ、こちらこそ、キッチンを使わせて頂いてありがとうございます。」
「ホントにいい匂いがしてきたわね。」
「部屋中この匂いになってしまうので…。寝室とか、ちゃんと扉しまってますか?」
「ええ、大丈夫よ。でも、仏間は開けておくわ。おじいちゃんにも美味しい匂い嗅がせてあげないと。」微笑むお祖母様に千花も微笑んだ。
「類と付き合うのは大変でしょ?」突然の投げかけに千花が戸惑うと、
「あの子、言い出したら聞かない所があるでしょ?一人っ子だし、甘やかして育てたつもりはないんだけど、それでもやっぱり頑固っていうか、協調性が無いっていうか、ホントに一人で突っ走っちゃう所があるから。」
「そんなことないですよ。たしかに、言い出したら折れないって部分はありますけど…でも類先輩は優しいです。」
「やっぱりいつもあなたが合わせてくれてるのよね?ごめんなさいね。今回のことも、私のところで止められたら良かったんだけど…。」
「いえ、私もそんな常識はずれなことって思ってたんですけど…類先輩がすごく嬉しそうなワクワクした顔するんで、つい流されちゃいました。」
「まぁ。ホント、あの子って子供みたいなとこあるでしょ。」
「でも、それも類先輩の魅力の一つですから。」
「千花さんは、ホントに類のことよく見て好きになってくれたのね。」
「えっ…。」
「千花さんなら安心だわ。これからも、類のことよろしく頼むわね。」
「そんな、とんでもないです。」千花はすっかり彼女だと思われていることに居心地の悪い思いを抱え、心の中でお祖母様に謝った。
「千花ちゃん!大変だよ!」慌てた声で類先輩が呼びに来た。どうしたのだろう?と千花がオーブンを覗くと、ケーキが綺麗に膨らんできていて、コップから溢れるくらいに膨らんでいる。
「オレが手伝ったせい?溢れちゃう?」不安そうな目で聞いてくる類先輩に、
「溢れないですよ。上手く出来てる証拠です。」と千花が答えると、
「でも、この間食べたやつ、こんなんじゃなかったよ。」
「オーブンから出したら徐々に萎んでいくんですよ。」
「そうなの?なんだ。溢れちゃうのかと思って心配した。」お祖母様と顔を見合わせて笑っていると、しばらくして、ピーピーとオーブンがなり、ケーキが焼けた。千花は慌ててオーブンを開け、竹串で真ん中を指して抜き、何もついてこないかを確認した。うん、大丈夫。綺麗に焼けている。オーブンを開けた瞬間に先程よりも濃厚な甘酸っぱいいい香りが部屋中に漂った。
「どう?焼けてる?」
「はい。綺麗に焼けましたよ。今出しますね。」千花はミトンをして鉄板を出すと、敷いてあった鍋敷きの上に鉄板をのせ、素早くココット皿と紙コップを網のクーラーの上に並べ替え、鉄板に残ったお湯を慎重に流しへ捨てた。顔がくっつきそうなほど近くでケーキを見ている類先輩を見て、
「紙コップは大丈夫ですけど、お皿は触ったらやけどしますよ。」と言った。類先輩は、
「だんだん萎んでいっちゃう。」と少し残念そうな顔をした。
「今食べたらどうなる?」興味津々の顔の類先輩に
「間違いなくやけどします。」千花が答えると、
「やっぱり待たなきゃ駄目か…」と類先輩は肩を落とした。
「沢山あるから、一つ試しに熱々のを食べてみたらどうですか?」千花が言うと、
「良いの?」と目を輝かせた。
「でも、ホントにあっついんで気をつけて下さいね。妹も焼き立てが食べてみたいって食べてやけどしてたんで。」千花が笑いながら言うと、類先輩は端っこの紙コップをとると、ティースプーンを持ってきて一口すくった。シュワシュワと音を立てて、まだ萎んでいる途中のケーキからは湯気が立ち上っている。フーフーと息を吹きかけると、類先輩は口へ運んだ。絶対まだ熱いだろうな、と思いながら、千花が様子を伺うと、
「あっつ…。ナニコレ…すぐなくなっちゃう。」と驚いた表情で類先輩が言った。花音と同じ反応で笑えた。
「冷ましたほうが美味しいでしょ?」
「うん。でも作りたても食べてみたかったから嬉しい。」と子供のような顔で類先輩は微笑んだ。ある程度粗熱が取れると、千花は紙コップをテーブルの上に広げて並べた。
「何かいい匂いしてきた!」と嬉しそうな類先輩に、
「もうちょっとしたら膨らんでくると思いますよ。」と千花が答えると、類先輩は満面の笑みで
「楽しみ。」と答えた。この笑顔ホントに反則だよな…と千花が思っていると、お祖母様が
「千花さん、良かったらこっちで一服しない?」とリビングへ誘ってくれた。千花はお言葉に甘えてお祖母様がおられるリビングへ移動した。テーブルの上には千花がプレゼントしたアレンジが真ん中に飾ってあった。千花は気に入ってもらえて良かったな、と思った。
「今日はありがとうね。」
「いえ、こちらこそ、キッチンを使わせて頂いてありがとうございます。」
「ホントにいい匂いがしてきたわね。」
「部屋中この匂いになってしまうので…。寝室とか、ちゃんと扉しまってますか?」
「ええ、大丈夫よ。でも、仏間は開けておくわ。おじいちゃんにも美味しい匂い嗅がせてあげないと。」微笑むお祖母様に千花も微笑んだ。
「類と付き合うのは大変でしょ?」突然の投げかけに千花が戸惑うと、
「あの子、言い出したら聞かない所があるでしょ?一人っ子だし、甘やかして育てたつもりはないんだけど、それでもやっぱり頑固っていうか、協調性が無いっていうか、ホントに一人で突っ走っちゃう所があるから。」
「そんなことないですよ。たしかに、言い出したら折れないって部分はありますけど…でも類先輩は優しいです。」
「やっぱりいつもあなたが合わせてくれてるのよね?ごめんなさいね。今回のことも、私のところで止められたら良かったんだけど…。」
「いえ、私もそんな常識はずれなことって思ってたんですけど…類先輩がすごく嬉しそうなワクワクした顔するんで、つい流されちゃいました。」
「まぁ。ホント、あの子って子供みたいなとこあるでしょ。」
「でも、それも類先輩の魅力の一つですから。」
「千花さんは、ホントに類のことよく見て好きになってくれたのね。」
「えっ…。」
「千花さんなら安心だわ。これからも、類のことよろしく頼むわね。」
「そんな、とんでもないです。」千花はすっかり彼女だと思われていることに居心地の悪い思いを抱え、心の中でお祖母様に謝った。
「千花ちゃん!大変だよ!」慌てた声で類先輩が呼びに来た。どうしたのだろう?と千花がオーブンを覗くと、ケーキが綺麗に膨らんできていて、コップから溢れるくらいに膨らんでいる。
「オレが手伝ったせい?溢れちゃう?」不安そうな目で聞いてくる類先輩に、
「溢れないですよ。上手く出来てる証拠です。」と千花が答えると、
「でも、この間食べたやつ、こんなんじゃなかったよ。」
「オーブンから出したら徐々に萎んでいくんですよ。」
「そうなの?なんだ。溢れちゃうのかと思って心配した。」お祖母様と顔を見合わせて笑っていると、しばらくして、ピーピーとオーブンがなり、ケーキが焼けた。千花は慌ててオーブンを開け、竹串で真ん中を指して抜き、何もついてこないかを確認した。うん、大丈夫。綺麗に焼けている。オーブンを開けた瞬間に先程よりも濃厚な甘酸っぱいいい香りが部屋中に漂った。
「どう?焼けてる?」
「はい。綺麗に焼けましたよ。今出しますね。」千花はミトンをして鉄板を出すと、敷いてあった鍋敷きの上に鉄板をのせ、素早くココット皿と紙コップを網のクーラーの上に並べ替え、鉄板に残ったお湯を慎重に流しへ捨てた。顔がくっつきそうなほど近くでケーキを見ている類先輩を見て、
「紙コップは大丈夫ですけど、お皿は触ったらやけどしますよ。」と言った。類先輩は、
「だんだん萎んでいっちゃう。」と少し残念そうな顔をした。
「今食べたらどうなる?」興味津々の顔の類先輩に
「間違いなくやけどします。」千花が答えると、
「やっぱり待たなきゃ駄目か…」と類先輩は肩を落とした。
「沢山あるから、一つ試しに熱々のを食べてみたらどうですか?」千花が言うと、
「良いの?」と目を輝かせた。
「でも、ホントにあっついんで気をつけて下さいね。妹も焼き立てが食べてみたいって食べてやけどしてたんで。」千花が笑いながら言うと、類先輩は端っこの紙コップをとると、ティースプーンを持ってきて一口すくった。シュワシュワと音を立てて、まだ萎んでいる途中のケーキからは湯気が立ち上っている。フーフーと息を吹きかけると、類先輩は口へ運んだ。絶対まだ熱いだろうな、と思いながら、千花が様子を伺うと、
「あっつ…。ナニコレ…すぐなくなっちゃう。」と驚いた表情で類先輩が言った。花音と同じ反応で笑えた。
「冷ましたほうが美味しいでしょ?」
「うん。でも作りたても食べてみたかったから嬉しい。」と子供のような顔で類先輩は微笑んだ。ある程度粗熱が取れると、千花は紙コップをテーブルの上に広げて並べた。