花とバスケと浴衣と
ケーキが冷めるまでの間、一緒に夕食に出ようと、予定通り類先輩とお祖母様と3人でマンションから歩いて15分くらいのところにできたレストランにやってきた。洋食屋さんなのかな?という風貌の店内に入ると、ポテトを揚げるいい音と、お肉のいい匂いがしていた。お祖母様は
「ずっと気になっていたのよ、このお店。こんなに近くにできて嬉しいわ。」と上機嫌だった。千花はよく知らなかったが、有名なステーキのお店の支店らしい。メニューは至ってシンプルで、焼き加減とソースを選ぶのみ。ステーキとポテトだけで勝負をしている店らしかった。肉の焼き加減なんて普段あまり気にしたことがなかった千花は、真ん中の焼き加減のものを選び、お祖母様はレア、類先輩はしっかり焼いたものを注文した。しばらくして出てきたお皿に千花はびっくりした。大きな真っ白なお皿にこんもり乗ったフライドポテトと、ステーキ肉が綺麗に薄く切り分けられて、食べやすいように盛り付けてある。シンプルだけど、美味しそう。千花は思った。お祖母様も目をキラキラさせて、中がほとんど赤い状態のステーキ肉を、迷いなく口へ運んだ。
「思った通り。やっぱり美味しいわ、ここ。類、連れてきてくれてありがとう。」
「まさかメニューが一個しか無いとは思わなかったけど、それだけこだわってる店なんだろうね。確かに美味しい。」類先輩がポテトを頬張りながら言った。千花も一口食べて驚いた。お肉はとても柔らかくて、細切りのポテトはしっかり味が染み込んでいてカリッと揚がっていて食感の違いがあり、とても美味しかった。お祖母様も気に入ったようで、今度お友達を誘ってこようと言っていた。三人共美味しいステーキに大満足して、帰路についた。何か不思議な光景だよな…と千花は今の自分の状況を思った。三人でお祖母様のお宅へ戻り、ケーキが冷めているのを確認し、紙コップを3つ残して、残りは冷蔵庫へ入れさせてもらった。お祖母様が紅茶を入れてくれて、リビングで三人座り、味見を始めたところに、ピンポーンと突然玄関のチャイムが鳴った。
「あら、こんな時間に誰かしら?」と言いながら、お祖母様はインターフォンにでた。お客様だったら申し訳ないな、と千花が思っていると、
「何この甘いいい香り。お母さん、何か作ってたの?」廊下から声が聞こえてきた。あれ?この声って…と千花が考えていると、
「類の彼女がケーキを焼いてくれてるのよ。」とお祖母様が言いながらリビングへ入ってきた。
「類の彼女って…もしかして千花さん?」はっきりと声が聞こえて、千花は確信した。これ、雨宮先生だ。
「あら、あなたも知ってたの?」とお祖母様の声が聞こえたと思うと、雨宮先生がリビングに入ってきた。
「やっぱり、千花さんじゃない。どうしてここに?」
「こんばんは、お邪魔しています。」突然の状況に戸惑いながらも千花は挨拶をした。
「なんであんたが来るんだよ。」雨宮先生の登場に嫌そうな顔をした類先輩に、
「なんでって、あなた達こそお母さんの家で何してるのよ。」雨宮先生も噛み付いた。
「ケーキ食べてんの。見てわからない?」類先輩の冷たい一言。
「何で?」はてながいっぱいという顔の雨宮先生。
「千花さんのチーズケーキとっても美味しいのよ。類が一緒に作りたいってワガママ言って今日ここで作ってもらったのよ。」お祖母様が事情を説明してくれた。
「まぁ…。千花さんも類のワガママに付き合わされて、大変ね。駄目なものは駄目ってはっきり言ってやってよ。」
「いえ、そんな…。」
「も~なんなんだよ一体。ってか、何しに来たの?」
「何しにって、帯を返しに来たのよ。この間借りた帯。」
「ふーん。じゃぁもう用は済んだんでしょ?」
「もう。ホント、可愛くない息子ね。」
「まぁまぁ、あなた達いい加減にしなさい。千花さんの前で、恥ずかしい。」お祖母様が宥めてくれた。
「美味しそう。スフレケーキ?」
「はい。スフレチーズケーキです。沢山あるので、先生もお一ついかがですか…。」千花が言うと、隣で類先輩が大きくため息をついた。ご機嫌斜めの類先輩を放置して、雨宮先生は
「え?良いの?嬉しい。」と笑顔で言うと、ちゃっかりお祖母様の隣の席に腰掛けた。お祖母様がカップを出してくれたので、千花は冷蔵庫から紙コップ入りのチーズケーキを一つ取り出し、紅茶と一緒に雨宮先生の前に差し出した。
「うわー、美味しそう。いただきます。」と雨宮先生はケーキを食べると、目を見開いた。
「ナニコレ?美味しい。これホントに作ったの?信じられない。売ってるケーキみたい。」
「そうでしょ?私もこの間頂いた時ホントにびっくりしたのよ。そしたら、類が、彼女にここで作ってもらいたいなんていうからまた驚いちゃって。」
「どうしてここなのよ。うちでも良いじゃない。」
「嫌だよ。ばあちゃんちの方が実家っぽいし。」
「何よそれ。酷い言い方ね。あら、このお花、もしかして、千花さんが?」
「そうなのよ。千花さんが作って今日持ってきてくれたのよ。可愛いでしょ?」
「ホント、素敵だわ。このマムの色合いがこのリビングによく合ってて良いわね。」
「お父さんのところにもお揃いのお花を持ってきてくれたのよ。」
「お義父さんの所?」雨宮先生は、スプーンを置くと、席を立って仏間へ入っていった。
「きゃーナニコレー。すっごいおしゃれ!!お義父さんびっくりしてるんじゃない?っていうか、お花が変わっただけで、仏壇もこんなに雰囲気が変わるのね。」と言いながら、パシャパシャとスマホで写真を撮っていた。そういえば、奥さんに写真と言われていたことを思い出し、千花も後で雨宮先生から写真を貰おうと思った。雨宮先生がリビングに戻ると、
「そういえば、」と千花に専攻を決めたのか?と聞いてきた。千花が日本語教育を目指してみようと思っていますと告げると、雨宮先生のテンションは跳ね上がり、怒涛の如く先生は話し始めた。10分ぐらい先生の独壇場となり、千花が興味深く話を聞いていると、隣りに座っていた類先輩が大きくため息をついて
「ちょっといい加減にしてよ。」と雨宮先生に喰いついた。
「あ、ごめんなさい。類の存在すっかり忘れてたわ。」カラカラと笑う雨宮先生に、類先輩はますます苛立った様子で、
「千花ちゃんそろそろ帰ろう。この人に捕まったら帰れなくなる。あまり遅くなったらご両親も心配するだろう。」と類先輩が言った。時計を見ると20時半を回っていた。確かに、そろそろ御暇しないとお祖母様にご迷惑がかかる。
「そうですね。ついつい長居をしてしまって申し訳ありません。」とお祖母様に謝ると、お祖母様は
「また気軽に遊びに来てちょうだい。」と笑顔で答えてくれた。雨宮先生は
「千花さん、また今度ゆっくりお話しましょう。研究室にいつでもきてね。」と笑ってくれた。
「はい、これからよろしくお願いします。」と頭を下げると、
「何かお嫁にもらうみたいな気持ちだわ。」と雨宮先生が笑った。千花が驚いてみると、類先輩は嫌そうな顔をして、
「オレの結婚がますます遠のいていく気がする…。」と呟いた。
「失礼ね。」と噛み付いた雨宮先生をお祖母様が宥め、
「ほら、類は千花さんを送っていくんでしょ?残りのケーキはまた後で取りに来たら良いから。早く準備をしなさい。」と言ってくれた。持ってきた紙袋を持って、類先輩は玄関へ向かった。千花も慌てて後を追い、お祖母様に改めてお礼を言って、家を後にした。
「ずっと気になっていたのよ、このお店。こんなに近くにできて嬉しいわ。」と上機嫌だった。千花はよく知らなかったが、有名なステーキのお店の支店らしい。メニューは至ってシンプルで、焼き加減とソースを選ぶのみ。ステーキとポテトだけで勝負をしている店らしかった。肉の焼き加減なんて普段あまり気にしたことがなかった千花は、真ん中の焼き加減のものを選び、お祖母様はレア、類先輩はしっかり焼いたものを注文した。しばらくして出てきたお皿に千花はびっくりした。大きな真っ白なお皿にこんもり乗ったフライドポテトと、ステーキ肉が綺麗に薄く切り分けられて、食べやすいように盛り付けてある。シンプルだけど、美味しそう。千花は思った。お祖母様も目をキラキラさせて、中がほとんど赤い状態のステーキ肉を、迷いなく口へ運んだ。
「思った通り。やっぱり美味しいわ、ここ。類、連れてきてくれてありがとう。」
「まさかメニューが一個しか無いとは思わなかったけど、それだけこだわってる店なんだろうね。確かに美味しい。」類先輩がポテトを頬張りながら言った。千花も一口食べて驚いた。お肉はとても柔らかくて、細切りのポテトはしっかり味が染み込んでいてカリッと揚がっていて食感の違いがあり、とても美味しかった。お祖母様も気に入ったようで、今度お友達を誘ってこようと言っていた。三人共美味しいステーキに大満足して、帰路についた。何か不思議な光景だよな…と千花は今の自分の状況を思った。三人でお祖母様のお宅へ戻り、ケーキが冷めているのを確認し、紙コップを3つ残して、残りは冷蔵庫へ入れさせてもらった。お祖母様が紅茶を入れてくれて、リビングで三人座り、味見を始めたところに、ピンポーンと突然玄関のチャイムが鳴った。
「あら、こんな時間に誰かしら?」と言いながら、お祖母様はインターフォンにでた。お客様だったら申し訳ないな、と千花が思っていると、
「何この甘いいい香り。お母さん、何か作ってたの?」廊下から声が聞こえてきた。あれ?この声って…と千花が考えていると、
「類の彼女がケーキを焼いてくれてるのよ。」とお祖母様が言いながらリビングへ入ってきた。
「類の彼女って…もしかして千花さん?」はっきりと声が聞こえて、千花は確信した。これ、雨宮先生だ。
「あら、あなたも知ってたの?」とお祖母様の声が聞こえたと思うと、雨宮先生がリビングに入ってきた。
「やっぱり、千花さんじゃない。どうしてここに?」
「こんばんは、お邪魔しています。」突然の状況に戸惑いながらも千花は挨拶をした。
「なんであんたが来るんだよ。」雨宮先生の登場に嫌そうな顔をした類先輩に、
「なんでって、あなた達こそお母さんの家で何してるのよ。」雨宮先生も噛み付いた。
「ケーキ食べてんの。見てわからない?」類先輩の冷たい一言。
「何で?」はてながいっぱいという顔の雨宮先生。
「千花さんのチーズケーキとっても美味しいのよ。類が一緒に作りたいってワガママ言って今日ここで作ってもらったのよ。」お祖母様が事情を説明してくれた。
「まぁ…。千花さんも類のワガママに付き合わされて、大変ね。駄目なものは駄目ってはっきり言ってやってよ。」
「いえ、そんな…。」
「も~なんなんだよ一体。ってか、何しに来たの?」
「何しにって、帯を返しに来たのよ。この間借りた帯。」
「ふーん。じゃぁもう用は済んだんでしょ?」
「もう。ホント、可愛くない息子ね。」
「まぁまぁ、あなた達いい加減にしなさい。千花さんの前で、恥ずかしい。」お祖母様が宥めてくれた。
「美味しそう。スフレケーキ?」
「はい。スフレチーズケーキです。沢山あるので、先生もお一ついかがですか…。」千花が言うと、隣で類先輩が大きくため息をついた。ご機嫌斜めの類先輩を放置して、雨宮先生は
「え?良いの?嬉しい。」と笑顔で言うと、ちゃっかりお祖母様の隣の席に腰掛けた。お祖母様がカップを出してくれたので、千花は冷蔵庫から紙コップ入りのチーズケーキを一つ取り出し、紅茶と一緒に雨宮先生の前に差し出した。
「うわー、美味しそう。いただきます。」と雨宮先生はケーキを食べると、目を見開いた。
「ナニコレ?美味しい。これホントに作ったの?信じられない。売ってるケーキみたい。」
「そうでしょ?私もこの間頂いた時ホントにびっくりしたのよ。そしたら、類が、彼女にここで作ってもらいたいなんていうからまた驚いちゃって。」
「どうしてここなのよ。うちでも良いじゃない。」
「嫌だよ。ばあちゃんちの方が実家っぽいし。」
「何よそれ。酷い言い方ね。あら、このお花、もしかして、千花さんが?」
「そうなのよ。千花さんが作って今日持ってきてくれたのよ。可愛いでしょ?」
「ホント、素敵だわ。このマムの色合いがこのリビングによく合ってて良いわね。」
「お父さんのところにもお揃いのお花を持ってきてくれたのよ。」
「お義父さんの所?」雨宮先生は、スプーンを置くと、席を立って仏間へ入っていった。
「きゃーナニコレー。すっごいおしゃれ!!お義父さんびっくりしてるんじゃない?っていうか、お花が変わっただけで、仏壇もこんなに雰囲気が変わるのね。」と言いながら、パシャパシャとスマホで写真を撮っていた。そういえば、奥さんに写真と言われていたことを思い出し、千花も後で雨宮先生から写真を貰おうと思った。雨宮先生がリビングに戻ると、
「そういえば、」と千花に専攻を決めたのか?と聞いてきた。千花が日本語教育を目指してみようと思っていますと告げると、雨宮先生のテンションは跳ね上がり、怒涛の如く先生は話し始めた。10分ぐらい先生の独壇場となり、千花が興味深く話を聞いていると、隣りに座っていた類先輩が大きくため息をついて
「ちょっといい加減にしてよ。」と雨宮先生に喰いついた。
「あ、ごめんなさい。類の存在すっかり忘れてたわ。」カラカラと笑う雨宮先生に、類先輩はますます苛立った様子で、
「千花ちゃんそろそろ帰ろう。この人に捕まったら帰れなくなる。あまり遅くなったらご両親も心配するだろう。」と類先輩が言った。時計を見ると20時半を回っていた。確かに、そろそろ御暇しないとお祖母様にご迷惑がかかる。
「そうですね。ついつい長居をしてしまって申し訳ありません。」とお祖母様に謝ると、お祖母様は
「また気軽に遊びに来てちょうだい。」と笑顔で答えてくれた。雨宮先生は
「千花さん、また今度ゆっくりお話しましょう。研究室にいつでもきてね。」と笑ってくれた。
「はい、これからよろしくお願いします。」と頭を下げると、
「何かお嫁にもらうみたいな気持ちだわ。」と雨宮先生が笑った。千花が驚いてみると、類先輩は嫌そうな顔をして、
「オレの結婚がますます遠のいていく気がする…。」と呟いた。
「失礼ね。」と噛み付いた雨宮先生をお祖母様が宥め、
「ほら、類は千花さんを送っていくんでしょ?残りのケーキはまた後で取りに来たら良いから。早く準備をしなさい。」と言ってくれた。持ってきた紙袋を持って、類先輩は玄関へ向かった。千花も慌てて後を追い、お祖母様に改めてお礼を言って、家を後にした。