花とバスケと浴衣と
「ごめんね、何か失礼な感じで。」しばらく行ったところで類先輩は千花に謝った。何のことだろう?と思いながら千花は
「何がですか?」と聞くと、
「保田さん。悪い人じゃないし、面白い人なんだけどあけすけに話しちゃうって言うか、何ていうか。ミマちゃんのこととかも。」
「あぁ、確かにミマはモデルみたいですもんね。」
「それに圭悟のことも。」
「だいたい想像通りなので大丈夫ですよ。」と千花が笑うと、類先輩は少し考えるような顔をして、
「保田さんにもし何か言われても気にしないで。あの人、多分千花ちゃんのこと狙うから。」
「はい?」
「多分だけど、千花ちゃんは保田さんのどストライクなんだよね。」
「見た目がってことですか?」
「うん。」
「でも、類先輩、私の事彼女って紹介してたし、大丈夫じゃないですか?」
「だと良いんだけど…。」急に弱気な類先輩に、もしかして昔なんかあったのかな?と千花は感じた。千花は類先輩の腕に自分の腕を絡めて近づき、
「まだ時間あるなら、あっちに飴細工の屋台が出てたんで見に行きたいです。」と上目使いにお願いすると、類先輩は千花の意図を組んでくれたのか
「良いよ。見に行こう。」と笑顔で答えてくれた。集合時間まで二人で屋台をひやかしながら、お祭り気分を満喫した。コンテスト出場者の集合時間になり、舞台袖へいくと、結構な人数の参加者が集まっていた。親子、幼稚園位の子供の姉妹、千花たちと同年代のカップル、夫婦と様々なペアがいた。
「結構参加者いるんじゃん。」
「ホントですね。」千花が苦笑いすると、類先輩は
「最後まで楽しもう。」と言った。千花は「最後まで」という言葉に、一瞬もう終わりなんだなと悲しい気持ちが湧いてきたが、その気持を隠すように満面の笑顔で頷いた。各ペアがそれぞれ一組づつ舞台に上がり、二人の関係について、司会者からの質問に答えて言った。千花たちの番になり、類先輩に手を引かれて舞台にあがった。舞台前に置かれていた椅子席にはいつの間にか結構な人が集まっていて、千花は驚いた。
「お二人の関係は?」と司会者の質問に、類先輩は
「恋人同士です。」と答えると、キャーという悲鳴が観客席から起こった。驚いて客席に目をやると、なんと類先輩のファン数名が見に来ていた。
「類せんぱーい!」と客席から声を掛けられ、類先輩も驚いた様子だったが、ファンの人たちに手を振って返した。司会者も驚いた様子で、
「あちらの方たちは?」と千花にマイクを向けるので、
「彼が所属しているスリーオンスリーのサークルのファンの方たちです。」と答えると、司会者は
「なるほど。たしかにイケメンですもんねー。ファンも多そうですね。」と言った。千花が頷くと、
「ファンもたくさんいるような方の彼女だと、大変なこともあるんじゃないですか?」と司会者が千花に聞いた。千花は迷いながらも
「確かに色々ありましたけど、彼が守ってくれるんで。」と類先輩を見ると、類先輩も頷いて、
「今はファンの皆さんにも公認してもらってるんで、大丈夫ですよね?」とファンに向っていった。ファンの人たちもコクコクと頷いていた。司会者は納得したように、
「なるほどファンも公認の恋人ですか。素晴らしい。お二人に大きな拍手を。」と次のペアの紹介に移ってくれた。ホッとしながら類先輩に手を引かれて舞台を下りると、ホウッと大きく息を吐いた。
「お疲れ様。」と千花の頭を撫でるように触る類先輩に、
「ファンの方がおられてびっくりしました。」と千花が言うと、
「オレもビビった。きっと圭悟か保田さんから連絡行ったんじゃないかな。」と類先輩は言った。
「あぁ、なるほど。ファンにとったら類先輩の貴重な浴衣姿がゲットできるチャンスですもんね。」と千花が納得すると、
「オレも千花ちゃんの写真欲しい。」と類先輩が呟いた。千花は思わず笑って、
「後で二人で撮りましょ。」と答えた。類先輩は嬉しそうに頷いた。
全ペアへのインタビューが終わると、もう一度全員が舞台上に上がり、参加者一人一人に同じ七夕の短冊が配られた。ペアの相手には見えないように、名前を書かずに願い事を書くように指示があった。それぞれ脇に置かれたテーブルで願い事を書き、千花がいたグループは笹に願い事をくくりつけ、反対側のテーブルの人たちは別の笹に願い事をくくりつけていた。司会者がくじを引いて、
「8番のペアの方、前へどうぞ。」と呼ばれた。何が行われるのかよくわからないまま、類先輩と千花が前へ出ると、
「今、お互いに願い事を書きましたね。相手がどんな内容を書いたかは知りませんね?」と聞かれ、頷くと、
「では、お互いの短冊がどこにあるか、探して持ってきて下さい。」と司会者が言った。え?と驚きながら、千花はそんなのわかるはずない…と思った。類先輩の字なんか見たことないし…。戸惑いながら類先輩の顔を見ると、少し困った顔で笑っていた。反対側の短冊を一つ一つ読んで確かめながら、絶対わからないよ…と思っていると、
「また一緒にチーズケーキが作れますように」と綺麗な字で書かれた短冊があった。えっ?もしかしてこれ、類先輩の?と千花は思いながら、他の短冊を眺め、迷った末にその短冊を選んだ。千花の書いた願い事は「ずっと仲良くいられますように」という至って普通のとりとめのない内容で、きっと類先輩はわからないだろうな、と千花は思った。お互いに短冊を一つずつ持ってきて、司会者に見せると、司会者が類先輩に、
「なんて書いてあるか読んで下さい。」と言った。類先輩が
「ずっと仲良くいられますように」と千花に短冊を見せながら言った。千花は驚いて目を丸くすると、司会者が
「これはあなたが書いた短冊ですか?」と確認をした。千花が頷くと、
「素晴らしい。愛の力ですねー。では、彼女の方はどうでしょうか?読んで下さい。」と千花に向っていった。千花は
「また一緒にチーズケーキが作れますように」と読みながら類先輩に見せると、類先輩は満面の笑みで頷いた。
「おっとー、これは、まさかの展開。一組目から一発で当たるとは想像だにしていませんでした。」と司会者が驚きながら拍手をすると、会場からも拍手が起こった。類先輩は、千花の肩を抱いてペコっと頭を下げた。司会者の指示で二人で中央の大きな笹に二つ一緒にくくりつけ、舞台を降りた。
「どうしてわかったんですか?」と千花が類先輩に聞くと、
「一番字がキレイだったし、千花ちゃんの願いって考えた時、コレなら千花ちゃんっぽいなって思って。」と答えた。驚きながら
「絶対わからないと思ってました。」
「オレのはすぐにわかったでしょ?」
「はい。でも、類先輩の字初めて見ました。綺麗な字ですね。」
「親が煩いからね。」と類先輩は笑った。
全ペアの確認が終わって、最終結果発表になった。サクラで呼ばれている千花たちは審査対象ではないはずだが、会場の人気投票の結果、3位に入賞してしまい、類先輩と顔を見合わせて驚きながら、記念品を受け取った。類先輩は舞台上からファンの方々に手を振ってお礼を言っていた。2位は幼稚園児の双子姉妹で、1位はおそろいの模様の浴衣を着た親子のペアだった。コンテストは大盛況の中終わった。手を引いてもらって舞台を降りると、保田さんが舞台裏にいた。
「お疲れさん、類のお陰で盛り上がってよかったよ。」と類先輩に声を掛けた。類先輩は
「お疲れ様です。オレたち、こんなのもらっちゃって良かったんですかね?」と記念品を見せながら言うと、
「会場票が半端なかったし、良いんじゃない?」と笑った。そこへ、
「類せんぱーい!」とファンの方たちから声がかかった。千花は、ファンの方に会釈をして、
「一緒に写真撮りませんか?」と声をかけた。ファンの方々は
「キャー千花ちゃん、ナイスアシスト。」と喜んでくれて、類先輩はいつの間にかファンの皆さんに囲まれて写真撮影会になった。千花もスマホを取り出して、写真を撮ろうとしていると、
「千花ちゃんは入らなくていいの?」と保田さんが声をかけた。千花は首を振って、
「私は大丈夫です。」と答えていると、ファンの方が
「千花ちゃんもやすさんも一緒に入りましょうよ。」と声をかけてくれた。戸惑う千花の背中を押して、保田さんは写真に入るため輪の中に入り、戸惑う千花の手を類先輩が引っ張って
「千花ちゃんはここね。」と類先輩の目の前に立たせた。え?と思っていると、後ろからふんわり抱きしめられて、
「お願いします。」と類先輩は言った。ファンの方々のキャーという声と共に写真が撮られた。撮影会が終わると、ファンの方は、
「千花ちゃんありがとねー。」と言って手を振って帰っていった。千花は呆気にとられながらも、会釈をして答えた。
「類のファンまで手懐けるとは中々やるねー、千花ちゃん」と保田さんが千花の肩に手を置くと、類先輩は
「ちょっと保田さん、オレの彼女に容易く触らないでくださいよ。」と千花を隠すようにして前に立った。
「へー。オレの知ってる類とは思えない対応。相当必死だな。」と保田さんは笑った。
「保田さんには絶対渡しませんからね。」と類先輩が言うと、保田さんは
「まぁ、どっちを選ぶかは千花ちゃん次第だからな。」とあしらった。保田さんはわざと類の肩越しに
「類に飽きたらいつでも待ってるよ。」と千花に向っていった。千花は類先輩の腕に抱きつきながら保田さんを睨みつけ、
「類先輩が良いです。」と言った。保田さんは笑いながら
「はいはい、ごちそうさま。今日はありがとな。類、また連絡するわ。」と言った。
照れたように少し顔を赤くした類先輩の表情に、千花はとんでもないことをしてしまったと赤くなったが、類先輩は優しく微笑んで、
「さ、帰ろっか。」と手を繋ぎ直した。千花が頷くと、類先輩はゆっくり歩き始めた。
「何がですか?」と聞くと、
「保田さん。悪い人じゃないし、面白い人なんだけどあけすけに話しちゃうって言うか、何ていうか。ミマちゃんのこととかも。」
「あぁ、確かにミマはモデルみたいですもんね。」
「それに圭悟のことも。」
「だいたい想像通りなので大丈夫ですよ。」と千花が笑うと、類先輩は少し考えるような顔をして、
「保田さんにもし何か言われても気にしないで。あの人、多分千花ちゃんのこと狙うから。」
「はい?」
「多分だけど、千花ちゃんは保田さんのどストライクなんだよね。」
「見た目がってことですか?」
「うん。」
「でも、類先輩、私の事彼女って紹介してたし、大丈夫じゃないですか?」
「だと良いんだけど…。」急に弱気な類先輩に、もしかして昔なんかあったのかな?と千花は感じた。千花は類先輩の腕に自分の腕を絡めて近づき、
「まだ時間あるなら、あっちに飴細工の屋台が出てたんで見に行きたいです。」と上目使いにお願いすると、類先輩は千花の意図を組んでくれたのか
「良いよ。見に行こう。」と笑顔で答えてくれた。集合時間まで二人で屋台をひやかしながら、お祭り気分を満喫した。コンテスト出場者の集合時間になり、舞台袖へいくと、結構な人数の参加者が集まっていた。親子、幼稚園位の子供の姉妹、千花たちと同年代のカップル、夫婦と様々なペアがいた。
「結構参加者いるんじゃん。」
「ホントですね。」千花が苦笑いすると、類先輩は
「最後まで楽しもう。」と言った。千花は「最後まで」という言葉に、一瞬もう終わりなんだなと悲しい気持ちが湧いてきたが、その気持を隠すように満面の笑顔で頷いた。各ペアがそれぞれ一組づつ舞台に上がり、二人の関係について、司会者からの質問に答えて言った。千花たちの番になり、類先輩に手を引かれて舞台にあがった。舞台前に置かれていた椅子席にはいつの間にか結構な人が集まっていて、千花は驚いた。
「お二人の関係は?」と司会者の質問に、類先輩は
「恋人同士です。」と答えると、キャーという悲鳴が観客席から起こった。驚いて客席に目をやると、なんと類先輩のファン数名が見に来ていた。
「類せんぱーい!」と客席から声を掛けられ、類先輩も驚いた様子だったが、ファンの人たちに手を振って返した。司会者も驚いた様子で、
「あちらの方たちは?」と千花にマイクを向けるので、
「彼が所属しているスリーオンスリーのサークルのファンの方たちです。」と答えると、司会者は
「なるほど。たしかにイケメンですもんねー。ファンも多そうですね。」と言った。千花が頷くと、
「ファンもたくさんいるような方の彼女だと、大変なこともあるんじゃないですか?」と司会者が千花に聞いた。千花は迷いながらも
「確かに色々ありましたけど、彼が守ってくれるんで。」と類先輩を見ると、類先輩も頷いて、
「今はファンの皆さんにも公認してもらってるんで、大丈夫ですよね?」とファンに向っていった。ファンの人たちもコクコクと頷いていた。司会者は納得したように、
「なるほどファンも公認の恋人ですか。素晴らしい。お二人に大きな拍手を。」と次のペアの紹介に移ってくれた。ホッとしながら類先輩に手を引かれて舞台を下りると、ホウッと大きく息を吐いた。
「お疲れ様。」と千花の頭を撫でるように触る類先輩に、
「ファンの方がおられてびっくりしました。」と千花が言うと、
「オレもビビった。きっと圭悟か保田さんから連絡行ったんじゃないかな。」と類先輩は言った。
「あぁ、なるほど。ファンにとったら類先輩の貴重な浴衣姿がゲットできるチャンスですもんね。」と千花が納得すると、
「オレも千花ちゃんの写真欲しい。」と類先輩が呟いた。千花は思わず笑って、
「後で二人で撮りましょ。」と答えた。類先輩は嬉しそうに頷いた。
全ペアへのインタビューが終わると、もう一度全員が舞台上に上がり、参加者一人一人に同じ七夕の短冊が配られた。ペアの相手には見えないように、名前を書かずに願い事を書くように指示があった。それぞれ脇に置かれたテーブルで願い事を書き、千花がいたグループは笹に願い事をくくりつけ、反対側のテーブルの人たちは別の笹に願い事をくくりつけていた。司会者がくじを引いて、
「8番のペアの方、前へどうぞ。」と呼ばれた。何が行われるのかよくわからないまま、類先輩と千花が前へ出ると、
「今、お互いに願い事を書きましたね。相手がどんな内容を書いたかは知りませんね?」と聞かれ、頷くと、
「では、お互いの短冊がどこにあるか、探して持ってきて下さい。」と司会者が言った。え?と驚きながら、千花はそんなのわかるはずない…と思った。類先輩の字なんか見たことないし…。戸惑いながら類先輩の顔を見ると、少し困った顔で笑っていた。反対側の短冊を一つ一つ読んで確かめながら、絶対わからないよ…と思っていると、
「また一緒にチーズケーキが作れますように」と綺麗な字で書かれた短冊があった。えっ?もしかしてこれ、類先輩の?と千花は思いながら、他の短冊を眺め、迷った末にその短冊を選んだ。千花の書いた願い事は「ずっと仲良くいられますように」という至って普通のとりとめのない内容で、きっと類先輩はわからないだろうな、と千花は思った。お互いに短冊を一つずつ持ってきて、司会者に見せると、司会者が類先輩に、
「なんて書いてあるか読んで下さい。」と言った。類先輩が
「ずっと仲良くいられますように」と千花に短冊を見せながら言った。千花は驚いて目を丸くすると、司会者が
「これはあなたが書いた短冊ですか?」と確認をした。千花が頷くと、
「素晴らしい。愛の力ですねー。では、彼女の方はどうでしょうか?読んで下さい。」と千花に向っていった。千花は
「また一緒にチーズケーキが作れますように」と読みながら類先輩に見せると、類先輩は満面の笑みで頷いた。
「おっとー、これは、まさかの展開。一組目から一発で当たるとは想像だにしていませんでした。」と司会者が驚きながら拍手をすると、会場からも拍手が起こった。類先輩は、千花の肩を抱いてペコっと頭を下げた。司会者の指示で二人で中央の大きな笹に二つ一緒にくくりつけ、舞台を降りた。
「どうしてわかったんですか?」と千花が類先輩に聞くと、
「一番字がキレイだったし、千花ちゃんの願いって考えた時、コレなら千花ちゃんっぽいなって思って。」と答えた。驚きながら
「絶対わからないと思ってました。」
「オレのはすぐにわかったでしょ?」
「はい。でも、類先輩の字初めて見ました。綺麗な字ですね。」
「親が煩いからね。」と類先輩は笑った。
全ペアの確認が終わって、最終結果発表になった。サクラで呼ばれている千花たちは審査対象ではないはずだが、会場の人気投票の結果、3位に入賞してしまい、類先輩と顔を見合わせて驚きながら、記念品を受け取った。類先輩は舞台上からファンの方々に手を振ってお礼を言っていた。2位は幼稚園児の双子姉妹で、1位はおそろいの模様の浴衣を着た親子のペアだった。コンテストは大盛況の中終わった。手を引いてもらって舞台を降りると、保田さんが舞台裏にいた。
「お疲れさん、類のお陰で盛り上がってよかったよ。」と類先輩に声を掛けた。類先輩は
「お疲れ様です。オレたち、こんなのもらっちゃって良かったんですかね?」と記念品を見せながら言うと、
「会場票が半端なかったし、良いんじゃない?」と笑った。そこへ、
「類せんぱーい!」とファンの方たちから声がかかった。千花は、ファンの方に会釈をして、
「一緒に写真撮りませんか?」と声をかけた。ファンの方々は
「キャー千花ちゃん、ナイスアシスト。」と喜んでくれて、類先輩はいつの間にかファンの皆さんに囲まれて写真撮影会になった。千花もスマホを取り出して、写真を撮ろうとしていると、
「千花ちゃんは入らなくていいの?」と保田さんが声をかけた。千花は首を振って、
「私は大丈夫です。」と答えていると、ファンの方が
「千花ちゃんもやすさんも一緒に入りましょうよ。」と声をかけてくれた。戸惑う千花の背中を押して、保田さんは写真に入るため輪の中に入り、戸惑う千花の手を類先輩が引っ張って
「千花ちゃんはここね。」と類先輩の目の前に立たせた。え?と思っていると、後ろからふんわり抱きしめられて、
「お願いします。」と類先輩は言った。ファンの方々のキャーという声と共に写真が撮られた。撮影会が終わると、ファンの方は、
「千花ちゃんありがとねー。」と言って手を振って帰っていった。千花は呆気にとられながらも、会釈をして答えた。
「類のファンまで手懐けるとは中々やるねー、千花ちゃん」と保田さんが千花の肩に手を置くと、類先輩は
「ちょっと保田さん、オレの彼女に容易く触らないでくださいよ。」と千花を隠すようにして前に立った。
「へー。オレの知ってる類とは思えない対応。相当必死だな。」と保田さんは笑った。
「保田さんには絶対渡しませんからね。」と類先輩が言うと、保田さんは
「まぁ、どっちを選ぶかは千花ちゃん次第だからな。」とあしらった。保田さんはわざと類の肩越しに
「類に飽きたらいつでも待ってるよ。」と千花に向っていった。千花は類先輩の腕に抱きつきながら保田さんを睨みつけ、
「類先輩が良いです。」と言った。保田さんは笑いながら
「はいはい、ごちそうさま。今日はありがとな。類、また連絡するわ。」と言った。
照れたように少し顔を赤くした類先輩の表情に、千花はとんでもないことをしてしまったと赤くなったが、類先輩は優しく微笑んで、
「さ、帰ろっか。」と手を繋ぎ直した。千花が頷くと、類先輩はゆっくり歩き始めた。