私の心と夏の花火
携帯の着信音は断続的に続いている。
窓の外には色とりどりの花火。
「デートの邪魔するために、こうなるように仕組んだのに。
行かせるわけないだろ」
「なに、言ってんですか。
離してください」
身を捩ってみたところで腕は緩まない。
密着している体温。
首筋にかかる吐息。
「俺は、嫌か?」
「嫌、とかそういう問題じゃなくて」
大きな音を立てて散っていく花火。
響いている、携帯の着信音。
「俺じゃダメか?」
「ダメ、とかそういう問題じゃなくて」
仕掛け花火に移ったのか、窓の外は少しだけ静かになった。
部屋の中、携帯の着信音だけが響いている。
「じゃあ、どういう問題だ?」
「……私には彼氏がいるので」
「別れればいいだけのことだ」
なぜかその言葉がすとんと胸に落ちた。
……ああ、そうか。
ケイと別れれば課長とつき合えるんだ。
仕事のことに理解のない、自分勝手なケイと。
「どうした?
急に黙って」
私の顔をのぞき込み、課長は意地の悪い顔でにやりと笑った。
「なんでもない、です」
揺れる心に気づかれないように視線を逸らす。
「迷っているなら俺にしろ」
なんでこの人はこんなに自信満々なんだろう。
重なる唇を素直に受け入れた。
そんな私を責め立てるように、着信音が聞こえている。
「……」
――ドーン。
ひときわ大きな花が窓の外に咲く。
途切れてしまった着信音。
見つめる先には艶めかしい課長の顔。
「判断はおまえに任せる。
……まあ、俺を選ぶと思うけどな」
どこまでも自信満々な課長は私の頬をするりと撫で、離れた。
撫でられた頬にふれると、熱くなっていることに気がついた。
きっと私は……。
【終】
窓の外には色とりどりの花火。
「デートの邪魔するために、こうなるように仕組んだのに。
行かせるわけないだろ」
「なに、言ってんですか。
離してください」
身を捩ってみたところで腕は緩まない。
密着している体温。
首筋にかかる吐息。
「俺は、嫌か?」
「嫌、とかそういう問題じゃなくて」
大きな音を立てて散っていく花火。
響いている、携帯の着信音。
「俺じゃダメか?」
「ダメ、とかそういう問題じゃなくて」
仕掛け花火に移ったのか、窓の外は少しだけ静かになった。
部屋の中、携帯の着信音だけが響いている。
「じゃあ、どういう問題だ?」
「……私には彼氏がいるので」
「別れればいいだけのことだ」
なぜかその言葉がすとんと胸に落ちた。
……ああ、そうか。
ケイと別れれば課長とつき合えるんだ。
仕事のことに理解のない、自分勝手なケイと。
「どうした?
急に黙って」
私の顔をのぞき込み、課長は意地の悪い顔でにやりと笑った。
「なんでもない、です」
揺れる心に気づかれないように視線を逸らす。
「迷っているなら俺にしろ」
なんでこの人はこんなに自信満々なんだろう。
重なる唇を素直に受け入れた。
そんな私を責め立てるように、着信音が聞こえている。
「……」
――ドーン。
ひときわ大きな花が窓の外に咲く。
途切れてしまった着信音。
見つめる先には艶めかしい課長の顔。
「判断はおまえに任せる。
……まあ、俺を選ぶと思うけどな」
どこまでも自信満々な課長は私の頬をするりと撫で、離れた。
撫でられた頬にふれると、熱くなっていることに気がついた。
きっと私は……。
【終】


