鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

ロンさん……。
ロンさんは、本気で課長と戦う気なんだ。
真剣な目がそれを語っていた。

「完全な1位って……お前は、すでに
パラリンピックで金メダルを取っているだろ?
周りからも『義足の絶対王者』って
言われているくせに」

「それは、お前の居ない時の話だ。
俺は、まだお前に競い勝ったことがない。
だからこそ、今回の東京パラリンピックでは、
日向。お前を倒して……完全な1位になる!!」

「まぁ……今日のを見て。確信したが。
今回は、俺の方が上だとな」

ロンさんは、そう冷たい表情で言い切ってきた。
さっきの気さくな感じとは違い
王者としての貫禄だった。
課長をわざと挑発する態度に私は、息を呑んだ。
するとその挑発を乗るように

「いい度胸じゃねぇーか。ロン。
いいだろう。その勝負乗ってやろうじゃねぇーか。
どっちか上が決着をつけてやる」

ギロッと課長も負けじと睨み返した。課長……。
喧嘩にならないかとハラハラしながら
2人を見ているとロンさんは、ニコッと笑った。
えっ……?

「じゃあ、俺が勝ったら結衣をちょうだい?」

「……殺すぞ?お前……」

あ、元のやり取りに戻った。
ロンさんは、貫禄を見せて怖い表情をしても
根が気さくで優しいせいか長く続かないらしい……。 
課長は、怒ってもロンさんは、笑っているし。

結局、因縁のライバルだが2人は、
仲のいい親友同士なのだろう。
何だかホッとした。安心した私は、お風呂に入った。
そしてお風呂から出ると課長とロンさんは、
一緒にお酒を飲んで話をしていた。

お互い英語だったので何を話しているのか
分からなかったけど何だか楽しそうだ。
男同士の世界みたいで
微笑ましくも羨ましくもあった。

しばらくするとロンさんは、酔っ払って
ソファーの上で眠ってしまった。
私は、ロンさんに毛布を掛けてあげた。

スヤスヤと眠るロンさんを見ていると
パラリンピックの金メダリストとは思えない。
義足なのもかなり驚きだが、こんなに美形なのに
陸上の世界王者だなんて……。

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