願い婚~幸せであるように~
そのコンセプトがスクリーンに映し出されて、私は「あなたらしい物語がここから始まる」と第一声を発してから、プレゼンを進めた。

エントランスやロビーなどの共有スペースは季節を感じられるように、春夏秋冬の四回ごとに変化させる間仕切り等を可動式にする。同じ空間でありながらも違う空間に来てしまったかのような新鮮さを感じ、季節を楽しめるように。

部屋は統一性はあるが、購入者のリクエストに応じて変更も受付け『私らしい部屋』を提案する。


「……以上となります。ご清聴ありがとうございました」


ひとりで全部喋るのには、キツイ部分もあったけど、無事やり遂げた達成感が得られた。川中さんと並んで、頭を下げると拍手が聞こえた。

その中でひときわ目立つ拍手をしていたのは、なんと社長だった。しかも立ち上がってまで。

思いもよらない社長の様子に目を丸くさせたのは、私だけではなくて他の人も同様だった。ただひとり、幸樹さんだけが冷ややかな目を向けていたが。

最後にうんうんとにこやかに笑う社長が何かを言おうと口を開きかけた時、幸樹さんが社長を廊下へと引っ張っていった。

これまた唖然としてしまったが、いち早く我に返った森村さんが慌てて、マイクを手にした。
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