ママの手料理
「っ、だって、こんなのおかしいよ、……」


「おかしくないよ、!…誰かが大也におかしいって言ったのかもしれないし今はそういう風潮かもしれないけど、でも少なくとも私はおかしくないと思う」


彼を抱き締める腕に一層力を込めながら、私はそう語り掛ける。


黙って私の言葉を聞いている彼の口から、声にならない声が漏れた。


「確かに今の社会的には、男性は女性を愛して女性は男性を愛するっていう方程式が立ってるけど、…でも、それだけが正解じゃないんじゃない?」


「……っ、」


誰にも言えない秘密、その仮面を取ってくれてありがとう。


仮面の中にある本当のあなたを見せてくれてありがとう。


(言ってくれてありがとう。私は、大也が私の味方でいてくれた様に、大也の味方でいたいから)


「だって、大也は大也でしょ?…それに、あの日私を助けてくれた人を怖いだなんて思うわけないよ」


大也の胸の辺りで組まれた私の手に、彼の濡れた手が触れる。


「…私はその恋を応援するよ。……だから、大丈夫」


確信なんてないくせに、それでも私は声を上げる。


「大丈夫だから、私を信じて」



誰を好きになろうが、弱かろうが、嫌がろうが関係ない。


記憶にある限り、今まで1度も恋愛感情を持ったことの無い私でも分かる。
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