ママの手料理
写真だって、この間撮って撮ってとせがまれて撮ってあげた、大也がマカロンを鼻の上に乗っけた意味不明の写真しかない。


家族の形見なんて何一つなくて、持っているのは記憶だけ。


それでも、これをする事で彼らが少しでも報われるなら。


(……)


私は、怖くても立ち向かわなければいけない。


皆が居るから大丈夫だという、根拠のない自信がどこからが湧き上がってくるのを感じた。






「…あれ、もしかして紫苑さん、寝てますかね、?」


あれから、どの位時間が経ったのだろう。


誰かの小声が聞こえて、私は眉を軽くしかめた。


どうやら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。


私はとりあえず、狸寝入りを続けたまま彼の言葉に耳をそばだてた。


「ん〜、…あ、寝てるね。こんな寒いのに暖房もつけないで、毛布もかけないで…」


そろりそろりと私の部屋に入ってきた誰かー大也だろうーが、私の身体にそっと毛布をかけてくれるのを感じる。


足音を立てないように頑張っているのかもしれないけれど、床が軋む音が聞こえているから完全にアウトだ。


「俺、先に下降りてるわ。さっき琥珀の声もしたし」


ふゎーあ、疲れた疲れた!と言いながら、その低い声の主が私の部屋を出たのが分かる。
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