キミに、愛と思いやりを
エピローグ

花蓮side


「ただいま!」



ドアが開く音がして、そう言ってきたのはチューリップの花束を抱えた、歩だった。



「おかえりなさい……。チューリップの花束……今年も買ってきてくれたの!」



今日は、結婚してからまる7年が経った。



「そりゃそうでしょ!」



あの時と同じように、歩は花束を渡してくれた。



「パパー、おかえり! わあ、ママ! チューリップきれえだねぇ!」



その場をぴょんぴょん跳ねながら、大喜びの愛香(あいか)。


愛香。5年前、私と彼の間にできた娘の名前である。チューリップの和名、鬱金香から『香』を入れ、それから花を愛する優しい女の子になってほしいという願いを込めて、彼がつけたのだ。


愛香は、栗色のふさふさの髪をしていて「動く人形」と近所の人が間違うくらい可愛い。



「綺麗ねぇ」



「ねえ、ママ。あいかね、チューリップだいすき!」



「うふふ、ママとパパもよ。愛香が大きくなっても、チューリップ大好きな女の子でいてくれるかしら」



「チューリップ、きれいだもん! ぜったい、きらいにならないもん!」



「そう、ありがとう。パパとママはね、チューリップだけじゃなくてお花を大切にできる子でいてほしい、と思ってつけたのよ」



「えっ? でも、あいかのなまえ、おはなみたいなかんじじゃないよ?」



私はクスっと笑った。
まだ幼稚園児だから、そりゃあ漢字の意味なんて分からないだろう。



「ねぇママ、どういうこと?」



「愛香がもっと大きくなったら、きっとわかるわ」



はてなマークを頭に浮かべている娘を見て、私は歩と微笑んだ。




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