アンバランスな苦悩
「うちの息子がお世話になりました」

お袋はお辞儀をした
聞きたいことはたくさん
あるだろうに

何も聞かない母親は
大きい存在に見えた

「瑛汰はもう帰れるの?」

「あ、ああ
付添が来たら

受付に来てくれって

金…払わないとだし
時間外対応だから
きっと高いよ」

母親に笑って見せた

「馬鹿ね
お金の問題じゃないでしょ」

お袋はそう言って
光汰と一緒に病室を出て行った

部屋には
桜さんと
マコとスミレが残った

冷たい空気が
流れた

部屋は暖房がかかり
温かいはずなのに

背筋が凍るほど

冷たい空間だった

「どうしてここに
お母さんがいるの?」

スミレが怖い顔をして
質問した

桜さんは嬉しそうに
ほほ笑むと
丸椅子に座って

足を組んだ

「スミレ
帰ろう

わかったでしょ?

瑛ちゃんは
ひどい男なの!

これできっぱり
忘れなさい」

マコがスミレの腕を
掴んだ
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