魔法の使い方
「隷女?」
「ああ、身寄りのない少女を捕らえて、売りさばいていたらしい。元々は王都から離れた地方でやっていたみたいだ」
「ヴィオルド先輩、どっからそんな情報仕入れてきたんすか?」
「地方有力者を相手にしている行商人から聞いた。しかし王都の外は盲点だったな」

 活気溢れる酒場で報告をし合うヴィオルドとドルーク。二人の席だけを緊張した空気が取り巻いている。

「しかし先輩、その制度って禁止されたんじゃ……?」
「名前を変えて残るんだよ。俺も隷女ってのは初めて聞いた。そしてその仕入れ、販売を一つの組織が独占的にやっているらしい」

 名前はソルバ商会、とヴィオルドは続けて説明する。地方で見つからないようにひっそりと商売をしていたが、最近は王都で活動を始めたらしい。初めのうちは行方不明になっても気づかれないような親無しの少女を狙っていたが、今では一般的な家庭の娘も狙われている。

 一通りの説明のあと、確信はないがレネはそれに巻き込まれたのでは、と言葉を締めくくった。

「俺の方も報告しますね。たぶんレネはそのソルバ商会に捕まったとみていいと思います」

 ヴィオルドが言葉を切ったあと、ドルークが口を開いた。

「今日の昼過ぎから夕方にエノテラ通り付近をガラの悪そうな男が数人いたみたいなんですが、目撃者の一人が『ソルバ』という単語を聞いたそうです」

 そのまま二人は今後について話し合う。規模が大きい犯罪であることがわかってきたので、警備隊本部へ報告し、衛兵全体で対策を練ることになるだろう。

 今後の話し合いが始まったところで、人影が一人分、席を立って速やかに店を出た。他の出入りする客に混ざって動いたので、ヴィオルドとドルークはタイミングの違和感に気づかない。
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