へたれライオン 卒業します
(尊side)

ちょうど1年前
俺が高1だった6月



あの頃、小4の弟のことが
心配でしょうがなかった



自分から友達の輪に入っていく
タイプではない歩は

家では友達の話を
一切しなかった



友達と遊ぶこともなかった



「友達と遊ばないのか?」

と聞いても

「友達といてもつまんねぇし
 オレ、一人でいるの好きだし」と

暗い顔でボソッと答えたりだった



ところがある日



「尊兄ちゃん!
 今日の給食の時に
 敦が牛乳噴き出してさ!!」



と、友達の話をするようになった



「学校終わったら
 今日も公民館に行ってくるから!

 敦と陽太と約束した」



「なにして遊ぶんだ?

 公民館で?」



「花純がうるせーから
 先に宿題終わらせて
 あとはグランドでサッカーとか」



俺は泣きたいほど嬉しかった



友達いらないって強がっていた弟が

友達と遊んで楽しかったことを
俺に話すようになったから



それからも歩の話には
『花純』という女子高生の名前が
よく出てきた



だから俺は
花純って子がどんな子か気になって
公民館にこっそり偵察に行った




公民館をのぞくと
和室で子供たちは宿題をしていた



この中に
ポニーテールの髪をなびかせ
子供たちと笑いあっている
女子高生がいた



『あの制服
 俺と同じ高校じゃん』

と思っていると



「尊兄ちゃん!

 何でいる??」



はっ・・・



その子に見とれていたら
弟の歩に見つかった



「え?歩くんのお兄さん?

 歩くんのお迎えですか?」



春の日だまりを思わせる
柔らかな微笑みが印象的なその子が
春名花純だった
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