へたれライオン 卒業します

｢まだ帰らないからな！｣


と歩が怒るから
俺も一緒に勉強を見る羽目に



ふと周りを見回すと
不思議な空間だと気づいた



｢この問題、わからない｣

と誰かが言えば


｢俺に見せてみ｣

と上級生が教えに行く



歩も下級生に

｢わからないとこないか？｣

と、自分から声をかけている



｢歩くん、教えるのうまいよね。ありがとね｣


と春名がほめれば

｢たいしたことないし｣

と、照れ隠しで答えるかわいい歩がいた



宿題が終わると



｢今日の掃除場所は・・・

　げ！トイレじゃん｣

とか

｢私、会議室掃いてくるね｣

とか
子供たちが自分から
公民館内の掃除に行った



家で全く家事なんてしない歩でさえ



｢窓の上の方届かねぇだろ

　オレ拭くから
　下の方拭いといて｣

と上級生ぶっている



春名は

｢みんなのために
　公民館を貸してくれてるんだから
　今日もキレイにしようね

　あと花井さんに会ったら
『今日も公民館を貸してくれて
　ありがとうございます』って
　お礼を言ってね

　お礼は言わないと伝わらないからね｣



とテーブルを拭きながら言い
子供たちも

｢わかってる！｣

と言いつつ
素直に受け入れている



春名の言うことって
なんか俺のばあちゃんみたいだなって
思った



この公民館での集まりは
子供たちが好きに遊んでるだけだと
思ってた



でも春名は
一緒に遊んであげるだけじゃなくて
人として大事なことも
歩たちに教えてくれてるんだなと思ったら
なんか尊敬した



同じ高校生とは思えない大人ぶりに
自分のことが情けなく思えた