香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
このままここでゆっくりと余生を過ごすものと思っていたのだけど……。
「喜べ、クルミ。お前と王太子殿下の婚約が決まったぞ」
父が至極嬉しそうに言う。
国王と親戚になれば、箔がつく。
「ま、待って下さい。王太子殿下と婚約なんて無理です〜!」
必死に断るも、父は聞き入れない。
「今のクルミは引っ込み思案だからなあ。だが、王太子は気高く有能だ。お前も気に入る」
王太子と結婚すれば、私が元の才色兼備な公爵令嬢に戻ると思っているのだろう。
「いえ、分不相応過ぎるので……」
「お前は公爵令嬢だぞ。何を言っている」
ハハッと私の言葉を笑い飛ばす父。
「国王からは明日城に来るように言われている。衣装選びが大変だな」
「無理ですよ〜」
半泣きで訴えれば、父の隣にいたお兄様が私に優しい目を向けた。
「王太子は僕の友人でもある。きっとクルミも気に入るよ」
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