香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
駄目だよ。
私は異世界から来たのだ。
この世界で結婚なんてとんでもないよ。
青ざめる私を父と兄はニコニコ顔で見ている。
この状況は非常にマズイ。
ここの人達はみんな優しくて、私の世話もよくしてくれて大好きだけど、屋敷を出て行こう。
私は元の世界に戻る方法を見つけなければいけない。
みんなが寝静まった頃、フード付きの上着を着ると、自分の宝ものと言うべきスマホと今まで集めた香油とお金を持って、窓を開けてそっと屋敷を抜け出す。
お金は金貨が十枚ある。
価値がよくわからないけど、私のお世話係が言うには、平民なら十年は遊んで暮らせると言っていた。
贅沢をしなければ、食べ物には困らない。
屋敷の隣にある大きな森を抜ければ王都がある。
外は真っ暗。
でも、私にはスマホがあるわ。
スマホのライトをかざして暗い夜道を歩く。
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