香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
き、きたー。
城出の合図だ。
「はい。是非」
笑顔を作ってエマ王女に返事をすれば、彼女はキラッと目を輝かせる。
朝食を抜いたのに昼食もほとんど喉を通らず、皿をつついていた。
緊張というよりは、みんなに内緒でこの城を出るという罪悪感。
昼食の時間が終わり、自分の部屋に戻ると荷物の整理をした。
「服はどこかで買って手に入れよう。香油と金貨さえあればいいわ」
香油と金貨を別々の袋に入れると、コンコンとノックの音がした。
「はい」と返事をすれば、ドアが開いてエマ王女とその侍女が現れた。
「準備はいいかしら?」
エマ王女に聞かれ、コクンと頷く。
「じゃあ、行くわよ」
エマ王女達の後をついて城の正面の出入り口に向かうと、立派な馬車が止まっていた。
馬が二頭、馬車の客室は座席が対面式になっていて大人が六人座れる広さがある。
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