香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
黒豹は赤い髪の青年の腕を離すと、私の前に立ち、その青年を牙を剥き出しにして威嚇した。
よくわからないけど、この豹は私を助けてくれている。
「サイモン、何を騒いでいる?」
木陰からもうひとりランプを手に持った長い金髪の青年が現れる。
「不審な奴がいたから問い詰めたら、ネロが邪魔したんだよ」
サイモンと呼ばれている青年は不機嫌顔でチラリと黒豹に目を向ける。
「ネロが邪魔ねえ」
金髪の青年は顎に手を当てそう呟くと、次に私を見た。
暗闇の中でも静かにきらめくその深海の青の瞳。
見てると吸い込まれそうだ。
背は百八十センチほど、端整な顔立ちで、ヴィクターお兄様もカッコイイと思うけど、彼はさらに美形というか神々しい。
「不審なって……女の子じゃないか。それにネロが庇うってことは何か訳があるんだ。なあ、ネロ」
< 15 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop