香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
金髪の青年に呼ばれると、彼の言葉がわかるのか黒豹は首を大きく縦に振った。
なんだかよくわからないけど、多分疑いは晴れたみたい。
「決して不審者ではありません。私はこれで失礼しますね」
ハハッと愛想笑いをしてこの場を去ろうとしたら、黒豹が私の服を噛んだ。
「え?なんで?」
前に進めなくて黒豹に目をやれば、サイモンという人がどこか勝ち誇った顔で言う。
「ほら、見ろ。アレン、やっぱこの女怪しいんだよ。捕まえて牢に入れよう。こんな真っ暗な夜に普通の女が出歩くわけねえ」
牢って……、この人達はお役人さんなのだろうか?
ふたりとも剣を持ってるし、身なりもきちんとしている。
だが、そんなことは今はどうでもいい。
あ~、こんなところで騒いでいたら、うちの人達が怪しんでやって来るかもしれないよ。
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