香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?

「なんだ?あの煙?」
馬を止め、サイモンが目を凝らしながら声をあげると、その横にいたヴィクターがじっと煙を見据えて言った。
「ひょっとしたら、ハーネスの兵が火を放ったんじゃないかな?」
「警笛が合図だったのかもしれない。娼館を燃やしてパルクレールの娘も殺して、誘拐などなかったことにする気なのかもしれない」
クルミが危ない!
馬を早く走らせ、娼館に向かう。
すると、馬の蹄の音に気づいたのか、ロイドが赤い建物の前で手を大きく振っている。
「アレン様〜、ここです」
俺が赤い建物の手前で馬を下りると、サイモンとヴィクターも馬を下りた。
「クルミは?」
彼女の居場所をロイドに聞くと、彼は悔しそうに唇を噛んだ。
「この娼館の二階にいます!ハーネスの兵が少し前に火を放って……。助けに行こうと思ったんですが、他の女の子達の救出をしていたら、一階はあっという間に火が回っていて……」
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