香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
ひとりでは下りられない。
だったら、彼を信じよう。
「おいで」
お兄ちゃんの言葉にコクッと頷き、子猫を胸に抱くと、飛び下りた。
彼がしっかりと私を受け止めるが、勢い余って一緒に地面に転がる。
「キャッ!」
思わず叫んで目をつぶった。
「大丈夫?怪我はない?」
お兄ちゃんの優しい声で目を開ければ、助けた猫がペロッと私の頬を舐める。
「うん。大丈夫。お前も無事だったね」
お兄ちゃんにそう答えると、子猫の頭を撫でた。
その様子を見ていた彼が、私に礼を言う。
「ネロを助けてくれてありがとう。好奇心旺盛ですぐにどこかに行っちゃうんだ」
「ネロって言うんだね。可愛い名前」
フフッと笑えば、ネロは私に頰ずりした。
「ネロは君が気に入ったみたいだな」
お兄ちゃんが立ち上がって私に手を貸すと、ネロは私の腕を登って、彼の肩に飛び移った。
< 3 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop