ただ愛されたいだけなのに

9.




     —モテ期到来⁉︎—


 授業が終わるまで、残り四時間と三十分。修了式まで残り二週間。
 気が遠くなってきた。わたしはいつまでこんなところにいなくちゃいけないの? パソコンだって、全然わからない。パソコンの仕事になんか就きたくない。

「では……斎藤さん」
 先生がわたしを見ている。
「大文字の場合は右と左、どちらに寄りますか?」
「左……?」
 わたしは当てずっぽうで答えた。
「そうですね」と先生。「半角が左に寄ります。これは皆さん覚えていますね」

 わたしのノートが落書きでいっぱいになった頃、ようやく一日が終了した。
 長い長い一日。夕方以降は一瞬で過ぎてしまう一日。

 スマホが鳴っている。

 ♪♪♪——着信:勇太——

 ゲー。よりによってなんでこいつ? どうせまた、はやく会いたいとか言うんでしょ。

 休み時間にかけてくれたらいいのに。友達のいないわたしは、休み時間の過ごし方にすごく気を使っている。教科書とパソコンの画面を交互に見て、時たまスマホに連絡が入ったふりをしたり、最終手段でトイレの個室に逃げ込んだり、十分間の使い道にあれほど神経をすり減らされることはない。


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