ただ愛されたいだけなのに
正紀:すまん、遅くなった。飯食って来る
なんなのよ、バーカ。
今日で自由時間は終わりなのに。明日からまた別々の一日がはじまる——そう考えると、心の奥底から言いようのない不安がこみ上げてきた。
『いつか同棲しよう』『うんうん! 内装はわたしが決めるからね』
こんな会話は頻繁にデートをしているカップルのもの。
正紀に会うことをすっぽかされて以来、わたしは会いたいと言わないようにしていた。ほんのすこし前までは、口癖のようにわめいていたけれど、今じゃまるっきり口にできなくなっている。正紀が自ら言ってくれたことと言えば、「いつか同棲しよう」それだけ。
でもそのいつかって、今年じゃない。正紀は大学を卒業して就職して、それから一人暮らしをして……一人暮らしをするまでに、何ヶ月——いや、何年働くつもりだろう。何にせよ、同棲は幻にしか思えない。だって、会うつもりもない相手と同棲したいだなんてそんな矛盾した話、どこに転がってるの?
会うこともできない相手と付き合うって、これほど辛いとは思わなかった。ていうか、そんな人と付き合うことになるとも思っていなかった。海外在住の人と遠距離恋愛をしている人たちでさえ、必ずや会う約束はしているはず。