ただ愛されたいだけなのに


「もしもし」
 あーん、正紀の声だぁ。

「もしもーし」わたしは陽気な声で言った。
「わたしと会う約束をしてくれないなら別れまぁーす」

「えっ?」

「だーかーらぁ、わたし、同棲とか信じてないし、一年以上も付き合ってるのに会ったことがないなんてバカみたいだから、これ以上会わずにチャットレディみたいなことしてられないってこと」
 わたしは早口でまくしたてるように答えた。

「えーっと……」正紀って頭の回転が悪いのよね。「その、つまり……?」

 わたしは特大のため息をついた。
「今年中にわたしと会わないなら、今すぐここで別れるって言ってるの」

 沈黙が返ってきた。
 沈黙が訪れたら終わりだ。正紀は黙りを決めこんで、わたしが沈黙に耐えられなくなって電話を切った後で、いつも必ず、長ったらしいメッセージを送ってくる。でもねチェリーボーイ、今回はそうはさせないわよ。

「あのさ、黙ってればすむと思って——」
「てか俺、いいよ」正紀が言った。

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